研究課題
唇顎口蓋裂は、日本において比較的高頻度にみられる先天性疾患の一つである。我々は、現在多くの唇顎口蓋裂児に対し、口蓋床を用いた術前顎矯正後(PIO)、口唇形成術と同時に歯肉歯槽骨膜形成術 (gingivoperiosteoplasty (GPP)) を施行している。本申請では、①術前顎矯正の治療結果に関連する因子の検討と、②口腔内スキャナーによる乳児、新生児の光学印象法の確立を目的として研究を行うことを目的とした。①に関しては、良好な研究結果が得られ、日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会にて発表し、海外誌 (Cleft Palate Craniofac J)へ投稿し、受理されている。本年度は、②口腔内スキャナーによる乳児、新生児の光学印象法の確立を目的とした。口腔内スキャナーを使用し、3Dプリンターを使用し義歯床用アクリルレジンを用いて口蓋床を出力した。光学印象により採得されたSTLデータは、顎堤部分に加え、鼻中隔下端の再現がアルジネートより優れ、口蓋深部の形態再現性が高かった。本結果を、日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会にて発表した。さらに、完全片側性唇顎裂(UCLA)乳児におけるPIOとGPP施行直後の上顎骨の三次元形態を評価した。初回手術としてGPPと口唇形成術を同時施行した患児のCTを資料とした。上顎骨前後径、上顎骨前方の垂直的位置、上顎骨後方垂直的位置、上顎骨幅径、ANS側方偏位量を計測し比較した。上顎骨前後径、上顎骨前方・後方の垂直的位置、上顎骨幅径は、PIOを施行した完全唇顎裂児とPIOを施行しなかった不完全唇顎裂児で有意な差はみられなかった。以上の結果より、PIOによる顎裂の整形は、術直後の上顎骨の狭窄や短縮を生じない可能性が高いと考えられた。本結果を、日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会にて発表した。学会にて発表後、日本口蓋裂学会雑誌へ投稿し受理された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、口腔内スキャナーを使用し、歯科用CADソフトを使用し、薬機法で承認された義歯床用アクリルレジンを用いて口蓋床を出力した。上記日程により、患児の初診日に口蓋床装着が可能となった。光学印象により採得されたSTLデータは、顎堤部分に加え、鼻中隔下端の再現がアルジネートより優れ、口蓋深部の形態再現性が高かった。本結果を、日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会にて発表した。さらに、完全片側性唇顎裂(UCLA)乳児におけるPIOとGPP施行直後の上顎骨の三次元形態を評価した。初回手術としてGPPと口唇形成術を同時施行した患児のCTを資料とした。上顎骨前後径、上顎骨前方の垂直的位置、上顎骨後方垂直的位置、上顎骨幅径、ANS側方偏位量を計測し比較した。上顎骨前後径、上顎骨前方・後方の垂直的位置、上顎骨幅径は、PIOを施行した完全唇顎裂児とPIOを施行しなかった不完全唇顎裂児で有意な差はみられなかった。以上の結果より、PIOによる顎裂の整形は、術直後の上顎骨の狭窄や短縮を生じない可能性が高いと考えられた。本結果を、日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会にて発表した。学会にて発表後、日本口蓋裂学会雑誌へ投稿し受理された。
本研究課題では、①術前顎矯正の治療結果に関連する因子の検討と、②口腔内スキャナーによる乳児、新生児の光学印象法の確立を目的として研究を行うことを目的とした。現時点では、①術前顎矯正の治療結果に関連する因子の検討に関して、良好な研究結果が得られており、すでに論文として発表した。さらに、②口腔内スキャナーによる乳児の口蓋印象法の確立に関して、学会発表はすでに数回行い、現在追加の内容を検討中である。さらに内容を検討し、今後は論文投稿を行っていく予定である。
前年度は、研究内容上、使用機器が既存の物を使用し、研究が可能であったため、助成金の未使用額が発生した。次年度は、使用する機器も増加する予定である。さらに学会発表も多数予定している。さらに、複数の論文作成を検討しており、計画通り研究を遂行していく予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
日本口蓋裂学会雑誌
巻: 49 ページ: 1-5
明海歯科医学雑誌
巻: 53 ページ: 44-54
The Japanese Journal of Jaw Deformities
巻: 33 ページ: 59~67
10.5927/jjjd.33.59