研究課題/領域番号 |
22K17257
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
白川 智彦 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (50908225)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨代謝 |
研究実績の概要 |
Slit and Trk-like protein 1 (Slitrk1)は神経細胞の樹状突起伸長を調整する膜タンパク質である。Slitrk1は多発性チックや不随意運動,自閉症を主症状とするトゥレット症候群の原因遺伝子の1つである。トゥレット症候群患者では骨折や骨形成の遅延が生じるとのケースレポートが過去に報告されている。しかしながら、骨におけるSlitrk1の役割については研究が進んでおらず,不明な点が多い.そこで本研究課題ではSlitrk1の骨形成における役割をSlitrk1 nullマウス(トゥレット症候群モデルマウス)を解析することで検討することとした。 マウス前骨芽細胞株MC3T3-E1細胞と初代培養頭蓋骨由来骨芽細胞(priOB)を分化培養し,Slitrk1の発現を確認したところ,Slitrk1の発現量は骨芽細胞分化に伴って増加した。分化条件下でSlitrk1 nullマウス由来のpriOBや初代培養骨髄間質細胞は、骨芽細胞分化マーカーの発現量や石灰化能、ALP活性が著明に減少した。Slitrk1 nullマウスの骨量は野生型マウスより減少傾向にあった。BMP-2コラーゲンペレットで広背筋筋膜下に誘導した異所性骨は野生型マウスに比べSlitrk1 nullマウスで小さかった。マウス胎仔由来線維芽細胞株10T1/2細胞を用いてRunx2の過剰発現で骨芽細胞分化を誘導したところ、Slitrk1との共発現でALPとOsteocalcinの発現量が有意に増加した。 以上の結果からSlitrk1は神経細胞のみでなく骨芽細胞にも発現を認め、骨形成に必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivo, in vitro両方の実験でSlitrk1の発現によって骨芽細胞分化が促進されることを確認できている.Slitrk1の骨芽細胞分化におけるメカニズムの解明に着手できており,現在必要と考えられる器材も整っている. マウスの飼育環境や実験環境は確保されているため,今後十分に実験を進めていくことが可能であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後はSlitrk1の骨代謝におけるメカニズムについて,qPCR法やウェスタンブロッティング法などを行うことで検証していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022度は新型コロナウイルス感染症の影響から学会発表を控えたため,旅費を申請していない.2023度は学会発表および論文投稿を行う予定である。
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