研究課題/領域番号 |
22K17282
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 かおり 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50888089)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯根膜 / 三叉神経 / 三叉神経中脳路核 / Wnt family |
研究実績の概要 |
口腔機能の低下と認知症の発症および認知機能の低下との関連性を示す多くのコホート研究があるが、口腔機能の低下と認知症を結びつける分子生理学的メカニズムは明らかになっていない。認知症の主要原因であるアルツハイマー病では、早期に青斑核で神経細胞死が起こる。近年、抜歯によって青斑核ニューロンが減少すると報告された。申請者は機械刺激を受けた歯根膜から産生されたWnt5aをはじめとする液性因子が神経細胞の分化・維持に作用する事を突き止めており、同様に青斑核細胞の生存・維持を調節している可能性が高いと考えた。そこで本研究では、機械刺激を受けた歯根膜細胞由来液性因子による中枢神経の保護作用を検討する。 本年度は、①歯根膜由来液性因子群が神経細胞の生存・維持に関与するかを明らかにする目的で、伸展刺激負荷歯根膜細胞の上清培地で神経細胞(C57BL/6Jマウスから単離) の培養を行い、軸索突起の長さ、分岐数、突起数の増減を評価した。伸展刺激後のrPDL上清培地で培養した神経細胞は、伸展していない上清培地で培養した神経細胞に比べ神経突起の有意な伸長が見られた。②伸展刺激を負荷した歯根膜細胞から産生・分泌される液性因子を同定する目的で15%、0.5 Hzで伸展刺激を負荷したrPDL細胞の神経栄養因子や軸索ガイダンスプロテインなどのmRNAの増減をqPCR法で解析した。NGF、BDNFなどの神経栄養因子群はmRNAの発現量に変化はみられなかったが、Wnt5aは機械刺激により時間依存的に有意にmRNAが増加した。このWnt5aの産生増強はMEK1/2やPI3Kの阻害薬の添加で抑制された。③伸展刺激後のrPDL上清培地に含まれるWnt5aが神経突起を伸長させたのか、を明らかにする目的で伸展刺激後のrPDL上清培地にanti-Wnt5a抗体を添加し神経細胞を培養すると軸索突起の伸長は有意に抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①③より機械刺激を負荷した歯根膜細胞の上清培地に含まれるWnt5aが神経細胞の生存・維持に関与する事、②より機械刺激を負荷した歯根膜細胞におけるWnt5aの産生機構を明らかにすることができたため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は他の液性因子の解析を進めながら、同定された液性因子による青斑核細胞生存・維持作用評価と伸展刺激歯根膜細胞由来液性因子の輸送システムの解明を目標に進める。
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