口腔機能の低下と認知機能の低下との関連性を示す報告は多く存在するが、その分子生理学的機序は未解明である。本研究は、歯根膜細胞に生理的な咀嚼運動を模倣した機械刺激を負荷し産生されるWnt5aの産生経路の同定と神経に対する生理機能の検討を行った。その結果(1)機械刺激を受けた歯根膜内でMEK1/2やPI3Kのシグナル経路が働きWnt5aが産生分泌されること、(2)三叉神経節細胞の軸索突起の長さ、分岐数、突起数が増加すること、(3)三叉神経節中脳路核細胞の生存・維持に機能することが分かった。本研究により、口腔組織由来因子が神経細胞の生存、維持、および分化を直接的に調節する機序の一端が明らかになった。
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