研究課題/領域番号 |
22K17294
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
山下 万美子 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (20909676)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Helicobacter pylori / Streptococcus mutans |
研究実績の概要 |
「う蝕病原菌であるStreptococcus mutansが産生する口腔バイオフィルムは、Helicobacter pyloriの胃粘膜感染に寄与するか」を解明することを目的として本研究を始めた。 胃粘膜感染におけるH. pylori除菌後に再感染を起こすことがあるが、そのH. pyloriは一体どこからやってくるのか?という疑問が生じる。そこで、「H. pyloriが、S. mutans産生口腔バイオフィルム環境下で生息することにより、胃での定着に必要な表現型を発現・維持する」という仮説を立てた。 H. pylori、S. mutansWT(野生株)、S. mutansΔgtfs(ショ糖依存性バイオフィルム産生遺伝子(gtf-B、gtf-C、gtf-D)破壊株)の3種類の細菌をBrain Heart Infusion(BHI)液体培地、10%ウシ胎児血清(FBS)添加BHI液体培地、1%スクロース添加BHI液体培地、10%FBSと1%スクロース添加BHI液体培地の4種類の培地において、37℃、微好気、湿潤下でそれぞれ3~4日単独培養または共培養した。培養後、試料を通例の方法により固定、脱水し凍結乾燥を行った。その後、蒸着し走査型電子顕微鏡(SEM)で観察、撮影を行った。その結果、H. pyloriとS. mutansWTまたはS. mutansΔgtfsとの共培養では、4種類全ての液体培地において単独培養した時と比較して、H. pyloriと S. mutans が相互に作用し形態変化を起こしていた。H. pyloriは培養環境の変化に応答し不活性型球状菌(coccoid form)に類似した形態へと変化し、口腔内で生存しやすい環境に適応している可能性が示唆された。S. mutansの除菌がH. pylori胃粘膜感染の機会と罹患者の減少に繋がる可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験を始める前に、in vitroにおける実験で実験系を確立させる必要がありその段階で時間がかかり、また生物科学施設(動物実験を行う施設)が混雑しておりスケジュールが合わなかったため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Helicobacter pyloriとStreptococcus mutansまたはStreptococcus mutans Δgtfs(ショ糖依存性バイオフィルム産生遺伝子(gtf-B、gtf-C、gtf-D)破壊株)を共培養し、走査型電子顕微鏡(SEM)で形態観察を行ってきたが、今後はさらに条件設定を増やし、同様の実験を進める。 また、これまでの実験は定性的な方法によるものであったので、今後は定量的な方法による実験も行う予定である。 来年度は、動物実験施設の状況を考慮して実験を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度にHelicobacter pyloriとStreptococcus mutansとの共培養の実験を行ったが、科研費応募時の実験計画より条件設定を細かく行ったので、当初予定していたよりも実験系が大幅に増え、予想以上に時間がかかり次の実験に進めなかったため、次年度使用額が生じた。
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