研究課題
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、医療現場で問題となる代表的な薬剤耐性菌である。本菌は院内感染の原因菌となり、感染症を発症すると難治性となり得るとから厳重な感染対策が必要となる。MRSAは、ヒトの鼻腔や口腔咽頭粘膜に保菌されていることが多い。耳鼻咽喉科・頭頸部外科では鼻腔や口腔咽頭の処置や検査、手術の際にこれらの領域を日常的に直接扱っているため、本菌の伝播に関与する可能性が高いと考えられるが、これまでにそのような検討はされておらず、その実態は明らかにはされていない。本研究では、 耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療において、医療従事者や医療環境がどれほどMRSAに暴露しているかを明らかにする。さらに、これらの医療従事者および環境由来MRSAと患者由来MRSAの関連性について、分子疫学的解析よりその関連性と伝播様式を明らかにする。このことにより、耳鼻咽喉科・頭頸部外診療における感染対策基盤を構築する予定である。 初年度は、まず耳鼻咽喉科・頭頸部外科におけるMRSAの現状を把握するために最近12年間に当科で検出されているMRSAについて調査を行った。当科におけるMRSAは、年間60件ほど検出されており、喀痰、耳漏、鼻腔、口腔・咽頭、膿汁から多く検出されていた。またこれに加えて、予定通り耳鼻咽喉科・頭頸部外科におけるMRSA症例から検体を収集し、MRSAの培養、菌種同定、菌株保存を進めた。患者からの分離株のみならず、対象患者の診療を行った医療従事者、診療環境からの環境培養も同様に進めている。。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り耳鼻咽喉科・頭頸部外科にMRSA患者、および診療環境より検体収集を行い、MRSA選択培地を用いて培養し菌株を保存している。検体は、診療環境、診療する医療従事者からも採取を行っている。今後も検体収集を継続予定である。
さらに検体収集を継続する。今後は保存されたMRSAのDNA抽出、菌種同定、同定されたMRSAは、タイピングを進めていく予定である。
消耗品の使用が予定より少なかったこと、また学会参加がオンラインとなったため、次年度使用額が生じた。次年度は、消耗品の使用や学会の現地参加の予定がありそれらに使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
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