研究課題
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、医療現場で問題となる代表的な薬剤耐性菌である。本菌は院内感染の原因菌となり、感染症を発症すると難治性となり得るとから厳重な感染対策が必要となる。MRSAは、ヒトの鼻腔や口腔咽頭粘膜に保菌されていることが多い。耳鼻咽喉科・頭頸部外科では鼻腔や口腔咽頭の処置や検査、手術の際にこれらの領域を日常的に直接扱っているため、本菌の伝播に関与する可能性が高いと考えられるが、これまでにそのような検討はされておらず、その実態は明らかにはされていない。本研究では、 耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療において、医療従事者や医療環境がどれほどMRSAに暴露しているかを明らかにする。さらに、これらの医療従事者および環境由来MRSAと患者由来MRSAの関連性について、分子疫学的解析よりその関連性と伝播様式を明らかにする。このことにより、耳鼻咽喉科・頭頸部外診療における感染対策基盤を構築する予定である。またこれに加えて、予定通り耳鼻咽喉科・頭頸部外科におけるMRSA症例から検体を収集し、MRSAの培養、菌種同定、菌株保存を進めた。患者からの分離株のみならず、対象患者の診療を行った医療従事者、診療環境からの環境培養も同様に進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り耳鼻咽喉科・頭頸部外科にMRSA患者、および診療環境より検体収集を行い、MRSA選択培地を用いて培養し菌株を保存している。同時に菌種同定も行っている。医療環境から収集したMRSAのタイピングを行い、MRSA患者株との比較を行っている。今後も検体収集を継続予定である。
さらに患者検体、医療環境、医療従事者からの検体採取をおこない、菌種同定、薬剤感受性試験、タイピングを進める予定である。また、MRSA患者の使用する病室の清掃状況の評価のための環境培養も進める。
消耗品費が予定より少なかったため、次年度の消耗品使用予定である。
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