研究課題/領域番号 |
22K17304
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
佐藤 利栄 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (20804892)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プロトンポンプ阻害薬 / 国民医療費 / 保険診療 / レセプトデータ / 過剰処方 / 不適切処方 / インターネット調査 |
研究実績の概要 |
プロトンポンプ阻害薬(以下PPIとする)は、胃酸分泌を抑制することにより、幅広い胃酸関連疾患の予防および治療において重要なキードラッグであり、その処方は日本を含めた全世界で増加し続けている。PPIの過剰処方・不適切処方は世界各国で指摘されているが、日本におけるPPIの過剰処方・不適切処方については検討されていない。これは、日本では保険病名がつけられ、PPIの不適切処方が表に出にくいことによると思われる。そこで本研究では、①日本のPPI処方は過剰か、全国の一般市民を対象としたPPI処方の実態調査の結果を国際比較により検討し、②日本のPPI処方は保険診療として適切か、単施設のレセプトデータを用いた調査により検討し、③なぜ不適切処方が起きるのか、患者ならびに医師を対象としたインターネットを用いた全国調査で明らかにする計画である。PPIの不適切処方の実態と背景を明らかにし、それを抑制する方策を提言することにより、医療適正化を図り、現在の日本の医療に急務である国民医療費削減に貢献することを目的にしている。 今年度は目的②を明らかにするため、島根大学医学部附属病院におけるPPI処方の実態調査を行うための準備を進めた。具体的には、島根大学医学部の医の倫理委員会に本研究の実施に対する申請を行い、承認を得た。なお、本研究は、PPI処方とレセプト病名および投与期間やフォローアップの内視鏡検査が適切に行われているか、等を検討する内容であるため、当院で行われている医療の適正評価の側面を持ちうり、このため、審査にやや時間を要した。しかし、保険病名と実際に医学的に妥当な医療プラクティスが必ずしも一致しているとは限らず、また、医学的に適切なプラクティスであっても保険診療としては不適切な場合もあることから、本研究の結果が、一概に提供されている医療の適正評価には必ずなるとはいえないと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究①として、日本のPPI処方は過剰かを、PPI処方の実態調査としてインターネットによる全国調査で明らかにし、研究②として、日本のPPI処方は保険診療として適切かを、単施設のレセプトデータを使用して検討し、研究③として、なぜ不適切処方が起きるのかを、患者および医師に対するインターネットによる全国調査から明らかにする計画である。当初の計画では、研究①、研究②、研究③の順に進める予定であったが、まず、処方実態を明らかにすることが必要と考えられたことから、実施順番を入れ替え、研究②から取り組むよう計画を変更した。すでに島根大学医学部の医の倫理委員会から、本研究の施行に対して承認されていることから、2023年度には、レセプトデータの入手、および各患者情報についての情報収集、データセット作成、統計解析等を適宜進めていく予定である。当初の計画では、2022年度内に倫理委員会からの承認された後、インターネット調査実施準備まで進め、2023年度に実施を行う予定であったことから、現状の進捗状況としては、おおむね計画通りであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、本研究は、研究①として、日本のPPI処方は過剰かを、PPI処方の実態調査としてインターネットによる全国調査で明らかにし、研究②として、日本のPPI処方は保険診療として適切かを、単施設のレセプトデータを使用して検討し、研究③として、なぜ不適切処方が起きるのかを、患者および医師に対するインターネットによる全国調査から明らかにする計画である。現状として、実施の順番を変更し、研究②を先行させ、その後研究①および研究③のインターネットによる全国調査を同時に行おうと考えている。すでに研究②については、島根大学医学部の医の倫理委員会から、実施の承認されていることから、2023年度には、レセプトデータの入手、および各患者情報についての情報収集、データセット作成、統計解析等を適宜進めていく予定である。また、2024年度に実施予定のインターネットによる全国調査へ向けて、2023年度のうちに質問票の作成や、インターネット調査会社との打ち合わせ等も適宜進める予定である。本研究の結果が、日本の医療、ひいては世界の医療におけるPPI処方の在り方について再考する契機になるよう、社会に働きかけていきたいと考えている。PPI処方の妥当性について改めて検討することにより、現在提供されている医療プラクティスが、患者さんにとって、より適切で、かつ医療経済的により効果的な医療を提供できる医療体制への変革および医療適正化を図り、現在の日本の医療に急務である国民医療費削減に貢献できるよう、研究者としての社会的役割を果たしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は研究①および研究③がインターネットを使用した全国調査である。この調査に使用する質問票もまだ十分に検討できていないことから、この調査費用については不透明な状態である。そのため、初年度(2022年度)に計画していたハードウェアおよびソフトウェアの新規購入を見送った。また、当初計画していた国内外への学会での情報収集や学会発表などは、コロナウイルス感染症パンデミックの影響がまだ色濃く残っていため、2022年度は参加を見送った。2023年度以降は、適宜必要な調査を進めながら、適宜論文作成や学会発表を行っていきたいと考えており、調査費用に加え、英文校正や学会参加費などに研究費を充てたいと考えている。
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