研究課題/領域番号 |
22K17325
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
柏 宗伸 金沢大学, 薬学系, 助教 (20916621)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 進行胃癌 / 費用対効果 |
研究実績の概要 |
進行胃癌の一次治療と三次治療以降のニボルマブ療法の費用効果分析モデルを構築するために、システマティックレビューを行い、2022年までに公表された進行胃癌に関するランダム化比較試験を網羅的に収集した。アジア人と欧米人を対象にした2つの大規模臨床試験を同定し、エビデンスを整理して要約した。その後、日本での診療パターンや疫学データを反映した数理モデルを構築した。すでに報告されているモデル構造を基に、一次治療と三次治療における費用効果を比較できるようなモデルを構築した。さらに、モデルの妥当性評価のために、臨床試験における全生存期間中央値を元に生存確率を計算し、モデルによる推計値との比較を行った。その結果、臨床試験の結果と推計値が大きく乖離しないことが確認され、当該モデルが妥当性を有することを確認した。 以下のテーマについて、構築したモデルを用いて探索的な検討を行った。①進行胃癌に対する一次治療の基本分析の検討:日本の保険支払い者の立場から分析し、各臨床試験のデータソースとしての妥当性を評価し、アジア人を対象とした臨床試験の結果をもとに基本分析を行い、シナリオ分析として欧米人を対象とした臨床試験をデータソースとして使用することを決定した。 ②一次治療と三次治療の費用対効果の比較評価:進行胃癌ニボルマブ療法の費用対効果についてモデル分析を行いました。その結果、日本の保険支払い者における立場から、三次治療以降におけるニボルマブ療法が費用対効果に優れることを明らかにした。また、欧米での臨床試験結果をデータソースに変更しても、結果が変わらないことが分かった。更に、パラメータの不確実性を評価するための感度分析によって、結果の頑健性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度に進行胃癌治療における医療資源の消費パターンを網羅的に推定するため、購入したレセプトデータに基づく解析を予定していた。また、エビデンスレベルを確保するためには、コホート研究として大規模なデータベースを利用したRWD解析がより望ましいと考え、医療費の解析にはNDBを用いた分析を試みることにした。しかし、初年度は収集に係る労力・費用やデータの質・量を勘案した場合、まずは積み上げ式の方法で診療料を推計し、後治療についても先行報告をレビューし、妥当な報告を元に設定することにした。
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今後の研究の推進方策 |
構築されたモデルに基づき医療経済評価を行うために以下の取り組みを行う。1)推定したモデルパラメータを元にした複数の治療レジメン間の間接比較を検討し,各レジメンの相対治療効果の推定を行う。2)分析結果をウェブ上で検討できるアプリケーション作成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、商用の大規模データベースに基づき、進行胃癌患者の医療費の解析を実施することを予定していた。しかしながら収集に係る労力・費用とデータの質・量とを勘案した場合、NDBデータベースを利用した解析がより望ましいと考え、予算の一部をNDBリサーチセンターでのデータ収集に係る費用(旅費含む)にあてることとした。次年度に、進行胃癌の薬物治療の医療費の解析を実施するため、初年度予算の一部をデータベース利用に係る費用として使用する。
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