研究課題/領域番号 |
22K17329
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
遠藤 彰 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 助教 (10866510)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 感染症数理モデル / 地域流行対策 / 政策分析 / 地域保健 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、感染症数理モデルを用いた流行対策現場との緊密な連携により、迅速な状況把握判断と対策の実行が要求される感染症流行下の地域公衆衛生に貢献すること、また複数のコミュニティ・社会場面からなる実社会における感染症流行の理解の解像度を高めることである。今年度は主に、COVID-19やインフルエンザなどの呼吸器感染症に関する数理モデルを用いた疫学的研究と、2022年春以降に発生したM痘(サル痘)の世界的流行に即応する研究に注力した研究を行った。前者の成果としてインフルエンザの学校内流行データを基盤としてCOVID-19の学校内流行とそれに対する各種対策をシミュレーションする研究(Endo et al. 2022 PNAS)やCOVID-19流行対策に関連する院内感染検出数のトレンド分析(Endo et al. 2022 J Infect Chemother)、島嶼におけるインフルエンザ流行の疫学的分析(Han et al. 2022)などを行った。また後者の成果としてはM痘が過去の流行と大きく異なり男性同性接触者人口内で急速に拡大した理由を理論的に説明し、対策の方針について提案する論文(Endo et al. 2022 Science)を流行開始直後に世界に先駆けて発表した。併せて、各国でのM痘流行が当初期待されていたよりも早い段階でピークアウトした理由に関する考察材料を提供する研究(Murayama et al. 2022 medRxiv)や日本における流行開始と今後のアジア諸国における展開について議論するレター(Endo et al. 2023 Research Square)をそれぞれプレプリントとして発表した(これらは今後国際誌で発表される予定である)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M痘流行の発生など、当初想定していなかったイベントの発生に伴う新規の(広い意味で当初の研究テーマの範囲内に収まる)研究計画を考案して実行した部分があるため、当初計画分を忠実に実施できたわけではないが、俯瞰的な観点における研究の進捗としては順調であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
M痘流行についての対応研究は「ポストCOVID-19時代」における感染症対策前線について考える上で非常に重要なケーススタディを提供する機会となっていることから、引き続き研究計画の一部に組み込むことを検討している。加えてCOVID-19を念頭に置いた濃厚接触データの分析や流行の異質性に関する理解を深める研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において端数が発生したこと及び年度内に予定していたサーバーレンタルの利用を次年度に延期したことから未使用分が発生した。
|