研究実績の概要 |
予測モデル実装の対象施設と協議を行った結果、当初研究対象としていた脳卒中疾患を変更し、せん妄の予測に切り替えた。本邦では、2020年度診療報酬改定にて、せん妄ハイリスク患者ケア加算が新設され、すべての入院患者に対してせん妄のリスク因子の確認を行い、ハイリスク患者に対してせん妄対策を実施する体制が評価されるようになった。上記背景より、本研究との相互補完的関係にあると判断し、対象をせん妄予測とした。実装対象施設では既にせん妄発生を予測するためのリスクスコアを独自に開発していたが、対象施設の電子カルテデータを取得して確認したところ、偽陽性率と偽陰性率に改善の余地が認められた。そこで、取得可能なデータを用いて機械学習と解釈性手法による解析を実施し、リスクスコアの改訂を行った。さらに、せん妄のリスク症例への対策として、せん妄対策用の新しいクリニカルパスを導入した。この一連の流れを国際学会で発表しbest paper awardを受賞した(Koutarou Matsumoto, Yasunobu Nohara, Mikako Sakaguchi, Yohei Takayama, Hidehisa Soejima and Naoki Nakashima, “Developing a Learning Health System for Delirium Using XAI”, Proceedings of the Asia Pacific Association for Medical Informatics 2022)。また、関連する内容が国際誌に受理された(Matsumoto K, Nohara Y, Sakaguchi M, Takayama Y, Fukushige S, Soejima H, et al. Delirium Prediction Using Machine Learning Interpretation Method and Its Incorporation into a Clinical Workflow. Appl. Sci. 2023, 13(3), 1564)。機械学習と解釈性手法を用いた上記の取り組みは、電子カルテの予測モデル実装の前段階的な位置づけとして、多くの示唆に富んだ学びを得た。
|