本研究は、大腸がんの生存率及び治療へのアクセスの経済的格差を明らかにすることを目的とする疫学研究である。本研究は当初2010~2015年のがん登録情報と詳細な治療情報を含むDiagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いる計画であったが、COVID-19流行に伴い、大阪府内のがん診療拠点病院のデータを用いて同感染症のがん医療への影響を調査することを目的とした研究(CanReCO:Cancer Registry-based Study on the Impact of COVID-19 on Cancer Care in Osaka)が2021年にスタートした。2022年度はこのCanReCOのデータを用いて、COVID-19流行前後でがん患者の受療行動、治療へのアクセスがどう変化したかの解析を行った。研究結果は査読付き国際学術誌に発表した。 第一に、COVID-19流行前後(2019・2020年)で消化器がん(食道、胃、大腸、肝、胆のう、膵がん)ののべ新規診断数、初回治療開始数などの診療パターンを比較した。のべ新規診断数は2020年に減少し(2019年に比し胃がんで最大減少幅12.7%、膵がんで最小減少幅1.9%)、治療数も診断数とほぼ同幅の減少を認めた。 第二に、大阪府におけるがん患者(食道、胃、大腸、肝、膵、肺、乳、子宮頸がん患者)の初回治療時の府内移動(府内在住のがん患者が初回治療を受療する際に居住二次医療圏外へ移動することと定義)、及びそれへのCOVID-19流行の影響を一般化推定方程式を用い分析した。より高齢、より進行したステージの患者は居住圏内の病院で初回治療を開始する傾向にあった。また、COVID-19緊急事態宣言前後、79歳以下の患者と一部の医療圏において居住医療圏内で初回治療を開始したオッズ比が約10%、有意に上昇していた。
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