研究課題
2023年度においては、フェニルピラゾール系農薬フィプロニル(Fip)の体内主要代謝物であるフィプロニルスルホン(FipS)がミクログリアを活性化するメカニズムを明らかにすることを目的とし、細胞内の代謝状態に関するミトコンドリア機能の評価やエクソソームに含まれるmicroRNAとmRNAの統合的ネットワーク解析を行った。ヒト不死化ミクログリアであるHMC3にFipおよびFipSを曝露し、JC-10蛍光色素および細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリア膜電位および代謝機能を評価した結果、FipおよびFipSは濃度依存的なミトコンドリア膜電位の低下を引き起こし、FipSではその作用が顕著に大きくなることを見出した。さらにFipS曝露直後において、ミトコンドリアにおける最大呼吸および予備呼吸能の低下に加え、プロトンリーク量の増加がみられることを明らかにした。またFipS曝露により2倍以上発現上昇したmicroRNA29種を同定し、qRT-PCRによりmiR-665等のmicroRNA発現が上昇していることを確認した。Ingenuity Pathway AnalysesソフトウェアのmicroRNA target filterを用いて、それらの標的として発現低下が予想され「Axonal Guidance Signaling」のパスウェイに関するmRNAから構成された神経分化に関する機能的ネットワークを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究により、神経炎症を惹起するFipSがミトコンドリア機能低下を引き起こし、さらに活性化したミクログリア由来のエクソソームに含まれるmicroRNAがニューロンの分化に影響を及ぼす新たな相互作用メカニズムの一端が明らかになった。脳内においてグリアやニューロンから分泌されるエクソソーム由来microRNAは血液脳関門を通過し末梢血、尿中においても安定的に検出可能であるため非侵襲的バイオマーカーとしての応用が検討されており、本研究により神経炎症の惹起を検出可能なバイオマーカーの候補を明らかにすることができた。
2024年度は、メタボローム解析等を活用し、ミクログリア中に含まれる代謝産物に関する網羅的解析を行うことで、ミクログリア-ニューロン間における細胞間相互作用に化学物質が及ぼす影響に関するさらなるメカニズムを明らかにする。さらにバイオマーカー候補となるmicroRNAを神経細胞に導入することでmicroRNAの機能評価を行う。
メタボローム解析を翌年度行うことになったため。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 11件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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