研究課題/領域番号 |
22K17344
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮良 政嗣 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (60816346)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 環境要因 / ドパミン神経細胞 / ミトコンドリア / グルコース |
研究実績の概要 |
本年度は、「軽度ミトコンドリア機能障害」または「グルコース利用障害」に対する感受性を制御する遺伝子の特定に向けて、ドパミン神経細胞において特徴的な発現パターンを示す遺伝子の抽出を行った。 研究開始時は、あえて純度が低いヒトiPS細胞由来ドパミン神経細胞からドパミン神経細胞と非ドパミン神経細胞を分離・精製し、両細胞の網羅的遺伝子発現解析を行うことを計画していた。そこでまず、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞(ヒトiPS細胞由来ドパミン神経細胞は高価であるため)を用いてセルソーターを利用した細胞分離実験系の立ち上げに取り組んだ。細胞表面マーカーCD24およびCD44に対する抗体を用いてSH-SY5Y細胞から神経細胞様のN-typeと上皮細胞様のS-typeを分離することができたものの、実際に低純度ヒトiPS細胞由来ドパミン神経細胞からドパミン神経細胞を分離するには細胞表面マーカーの検討など、コストと時間を要することが予想された。 そこで、研究開始時の計画を一部変更し、FUJIFILM Cellular Dynamics社のヒトiPS細胞由来分化神経細胞(iCellドーパミン神経細胞および同一ドナー由来のiCellグルタミン酸作動性神経細胞)を14日間培養後、両細胞からtotal RNAを抽出し、RNAシークエンスによる網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、グルタミン酸作動性神経細胞と比較してドパミン神経細胞において高発現または低発現している遺伝子を2,000種類以上確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトiPS細胞由来ドパミン神経細胞において高発現が認められた遺伝子の上位には、ドパミン神経細胞の分化や生存に重要であることが報告されている遺伝子が多く含まれていたことから、目的通りの遺伝子を抽出できたと考えられる。また、ヒト中脳由来細胞株LUHMES細胞および各種siRNA(ドパミン神経細胞において高発現が認められた上位30遺伝子)を購入済みであり、「軽度ミトコンドリア機能障害」または「グルコース利用障害」に対する感受性を制御する遺伝子の特定に向けてある程度準備が整ったため。
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今後の研究の推進方策 |
LUHMES細胞の培養・分化条件およびsiRNAの導入条件を検討後、ノックダウンすることによって低濃度ミトコンドリア神経毒(MPP+)または低グルコース誘発細胞死を著しく増強する遺伝子を特定する。その後、特定した遺伝子のノックダウン細胞において低濃度曝露でも顕著な細胞死を引き起こす環境化学物質、すなわちPDの環境要因候補物質のスクリーニングを実施したい。
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