研究課題/領域番号 |
22K17345
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
寺内 芳彦 高知大学, 医学部, 客員助教 (80821024)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 四種混合ワクチン / セービン株由来不活化ポリオワクチン / 長期免疫原性 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)において8歳時点で血清を採取、保管されている被験者の母子手帳から得られたデータの整理を行った。「セービン株由来不活化ポリオワクチン含有四種混合ワクチン(sIPV含有四種混合ワクチン)」を4回接種済みの被験者と、「強毒株由来不活化ポリオワクチン(wIPV)」を4回接種済みの被験者を抽出した。sIPV含有四種混合ワクチンの最終接種から血清採取までの期間が5年以上の被験者から100例、wIPVの最終接種から血清採取までの期間が5年以上の被験者から100例をそれぞれ無作為抽出し、国立感染症研究所でポリオウイルス強毒株1型および、弱毒株1型、2型、3型に対する中和抗体価を測定いただいた。 感染防御レベルとされる中和抗体価8倍以上だった例の割合を比較検討した。強毒株1型に対してはsIPV含有四種混合ワクチン接種例よりも、wIPV接種例で有意に高かった(57% VS 98%)。一方で弱毒株1型、2型、3型に対しては両ワクチン接種例の間で有意差を認めなかった(1型で93% VS 96%、2型で100% VS 98%、3型で99% VS 94%)。また、両ワクチンの最終接種から血清採取までの期間が5年以上6年未満の例と6年以上の例の間で比較検討した。中和抗体価8倍以上だった例の割合は、どちらのワクチン接種例においても強毒株1型、弱毒株1型、3型に対しては最終接種から5年以上6年未満の例よりも6年以上の例で低い傾向にあった。弱毒株2型に対しては、どちらのワクチン接種例においても5年以上6年未満の例と6年以上の例の間で同等であり、弱毒株2型に対する抗体価はどちらのワクチン接種例においても保たれやすい可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主目的であった、8歳時点でのポリオウイルスに対する中和抗体価については令和4年度に検討することができた。一方、セービン株由来不活化ポリオワクチン含有四種混合ワクチンに含まれるジフテリア菌、破傷風菌、百日咳菌に対する抗体価の測定については準備段階であり、令和5年度に測定し結果の検討を行う予定としている。百日咳菌に対する抗体価測定を行うためのマイクロプレートリーダーは令和4年度に購入済みで、百日せき抗体EIA「生研」を購入し測定する予定である。ジフテリア菌、破傷風菌に対する抗体価測定については当初の予定を変更し衛生環境研究所に助力を仰ぐ予定としたが、コロナ禍のため進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、百日咳菌、ジフテリア菌、破傷風菌に対する抗体価測定を行う予定である。百日咳菌に対する抗体価は研究代表者の所属する教室内で行う。ジフテリア菌に対する抗体価は、当初の計画ではVero細胞を用いた中和試験を申請者の所属する教室内で行う予定だったが、結果の判定を慎重に行うため衛生環境研究所に助力を仰ぐことを検討している。破傷風菌に対する抗体価測定に必要な破傷風抗体測定キット(KPA法)が購入できない可能性があり、その場合にも衛生環境研究所に助力を仰ぐことを考えている。 令和6年度に得られた成果の発表、論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた百日咳菌、ジフテリア菌、破傷風菌に対する抗体価測定が令和4年度に行えなかったため、これら抗体価測定に要する助成金を令和5年度に繰り越した。令和5年度にこれら抗体価測定を行うために繰り越した助成金を使用する予定としている。
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