研究課題/領域番号 |
22K17347
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
有馬 弘晃 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30909122)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ルワンダ / 妊婦 / 歯周病菌 / 病原性遺伝子 / 低体重児出生 |
研究実績の概要 |
本研究課題の成果の一部が月刊誌「Medical Science Digest」と「Bio Clinica」に掲載された。ルワンダ農村部ルシジ地区の妊婦口腔内から歯周病菌を検出し、その菌量と歯磨き習慣や出産結果との関連性を解析した結果を和文でまとめたものである。 また本年度は、菌量に着目したこれまでの検証に加え、歯周病菌の病原性遺伝子に着目し、その遺伝子型が歯磨き習慣や妊婦の属性でどのように異なるのか、そして妊娠出産結果との関連性があるのかを明らかにする研究を開始している。重度の歯周病を引き起こすRed-complexの中でも、最も歯周病原細菌として知られるPorphyromonas gingivalisに着目し、その病原性遺伝子(RgpA、RgpB、Kgp)の全塩基配列を読むための実験を計画した。まずNCBIからATCC標準株の対象遺伝子配列を抽出し、ApEソフトウェアにて約500-600bpずつに分割した領域に対するプライマーを設計した。これらのプライマーを用いて実際にPCRを行い、シングルバンドが得られたサンプルはそのままシークエンス解析を行った。PCRにて複数のバンドが確認されたサンプルや増幅領域では、PCR産物を電気泳動し、ゲルを切り出してDNAを精製したものをシークエンス解析に用いた。本年度は、妊娠出産結果と紐づけされている94サンプルとATCC株の計95サンプルのシークエンスデータの取得まで終了した。来年度は各遺伝子の塩基配列から系統解析をし、早産や低体重児出生のリスク因子となる遺伝子型の探索を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、アフリカ農村部の妊婦における口腔内の歯周病菌分布が早産や低体重児出生のリスク因子となっているかを明らかにすることを目的としている。そこでルワンダ農村部ルシジ地区において、妊婦を対象とした調査と妊娠後の出生データの取得を行っている。質問紙を用いた妊娠中の聞き取り調査では、妊婦の基本的属性や歯磨き習慣(歯磨き頻度、ブラシ交換頻度、仕様器具等)についてのデータを取得した。同時に妊婦の唾液を採取しDNAを抽出した。出生後には児の身長、体重、性別、出産時週数のデータを取得した。 ルシジ地区では実際に、歯磨き回数が少ない妊婦では口腔内の歯周病菌量が多いことがわかっている。菌量と出産結果との関連解析では、口腔内の歯周病菌量が多いほど児の体重が低くなる傾向にあった。これらの結果をまとめ、論文として報告している。 さらに歯周病菌量に着目したこれまでの検証に加え、歯周病菌の病原性遺伝子に着目し、その遺伝子型が歯磨き習慣や妊婦の属性でどのように異なるのか、そして妊娠出産結果との関連性があるのかを明らかにする研究を開始している。重度の歯周病を引き起こすRed-complexの中でも、最もメジャーなPorphyromonas gingivalisに着目し、その病原性遺伝子(RgpA、RgpB、Kgp)の全塩基配列を読むための実験を計画した。ApEソフトウェアにて約500-600bpずつに分割した領域に対するプライマーを設計した。これらのプライマーを用いて実際にPCRを行い、シングルバンドが得られたサンプルはそのままシークエンス解析を行った。PCRにて複数のバンドが確認されたサンプルや増幅領域では、ゲルを切り出して目的のPCR産物を精製したものをシークエンス解析に用いた。妊娠出産結果と紐づけされている94サンプルとATCC株の計95サンプルのシークエンスデータの取得まで終了している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、まずP. gingivalisの病原性遺伝子に関する解析を継続し、シークエンスデータのクリーニング及び多型情報のまとめを行う。それぞれの一塩基多型について、妊婦の年齢、児の出生時身長、出生時体重との関連性を解析する。また、これらの解析からハイリスク型の遺伝子を同定した後、対象のSNPを検出するプライマーとプローブを設計し、妊娠に対するハイリスク歯周病菌の検査手法を確立する。 さらに現在倫理申請中の研究計画では、地域間での歯磨き習慣や歯周病菌の保菌状況の違いが出産結果にそのような影響を与えているかを明らかにしてく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に研究実施国であるルワンダの倫理委員会で次の調査計画についての承認を得られる予定であったが、倫理承認の取得に時間を要しており、次年度にフィールド調査を実施する必要性が生じた。次年度はルワンダの首都キガリと農村部ルシジ地区の2地点において、妊婦を対象としたフィールド調査を実施する。そこで、旅費、消耗品、人件費として使用予定である。
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