研究実績の概要 |
本研究の目的は、①バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の原因メカニズムの解明と②発展途上国で運用可能なマルチ抗原検出イムノクロマトキットの作製による迅速診断システムの開発である。2022年度の①の研究成果として、バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の現状を把握するために、重要な流行国の情報を収集し、バングラデシュで発生したデング熱ウイルスの疫学データとCOVID-19流行期感染者数について、感染パターンを他の主要流行国と比較した。デング熱の主要流行国では、2020年と比較して、2021年のデング熱感染者は全体的に約36%減少していた。しかし、バングラデシュは、COVID-19パンデミックの2年目(2021年)にデング熱患者数が増加していた。さらに、ラテンアメリカの国々とは対照的に、東南アジアの国々では、デング熱患者数/人口100万人とCOVID-19患者数/人口100万人の間に強い正の相関を確認した。この疫学データ解析について取り纏め、投稿した我々の論文が国際誌に掲載された(Khan S, Akbar SMF, Yahiro T,et al., Int J Environ Res Public Health. 2022, 10768)。 臨床検体の分析については、まず臨床検体を収集するための手続きを実施し、300検体以上の血清サンプルを収集した。その後、DHFとCOVID-19の共感染を確認するために血清学的解析を実施した。DHF患者の約半数以上がSARS CoV-2 抗Nucleocapsid protein IgG抗体の陽性を示したことから、DHFとCOVID-19の共感染者が予想以上に多いことが明らかになった。血清型解析(1-4型)については、RT-pPCRにて解析を進めている。また、デングウイルスの全ゲノム配列解析も順次実施する。
|