研究実績の概要 |
本研究の目的は、①バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の原因メカニズムの解明と②マルチ抗原検出イムノクロマトキットの作製による迅速診断システムの開発である。2023年度の研究成果は、2021年から2023年にかけてバングラデシュで診断したデング熱(DF)患者から500検体以上の血清を保存し、その3分の1は既に血清学的解析を実施した。その結果、2021年のDF患者の60%、2022年のDF患者の100%がSARS-CoV-2のN-proteinに対するIgG抗体(抗SARS-CoV-2-N-IgG抗体)陽性であった。また、2022年の重症DF患者のほとんどの血清で抗SARS-CoV-2-N-IgG抗体価が高かった。さらに、SARS-CoV-2のIgGが高力価であったDF患者の70%以上(77/106)は、重症デング熱の徴候を少なくとも3つ示しており、DF患者におけるSARS-CoV-2の高IgG力価と重症度との間には正の相関が認められた(r=0.90)。この結果は、DF患者におけるSARS-CoV-2のIgG力価の高値が重症デング熱の臨床経過の予後予測因子となる可能性を示唆しており、2024年度においても継続的に解析を進める予定である。 また、バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の疫学データ解析について取り纏め、投稿した我々の論文が国際誌に掲載された(Akbar SMF, Khan S, Mahtab M, Mahtab MA, Yahiro T,et al., Recent Dengue Infection in Bangladesh: A Seasonal Endemic Progressing to Year-long Serious Health Concern. Euroasian J Hepatogastroenterol. 2023; 13 (2):145-151.)。
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