研究課題
全世界で増加の一途を辿って抗微生物薬耐性(Antimicrobial resistance)は、基礎疾患を持つ患者や急性ウイルス感染症後の免疫が低下した易感染性宿主の抗菌薬治療に大きく影響を与え、病状を長引かせ、医療全体を逼迫させている。ウイルス性呼吸器感染症が予後不良となる転機は、混合性あるいは続発性に生じる細菌感染症にあり、特に薬剤耐性菌による感染症は治療薬の選択肢が限られる。インフルエンザウイルスやRSウイルス感染症において細菌感染症の併発により病態を著しく悪化させるとは知られているが、新型コロナウイルス感染症では原因菌が特定される前に広域スペクトルの抗菌薬投与が開始されることもあり、混合感染の研究が進んでいない。本申請では、新型コロナウイルス感染に併発する薬剤耐性菌の混合感染のメカニズムを、ヒトiPS細胞由来気道上皮細胞およびヒトiPS細胞由来肺胞上皮細胞などを用いて解析する。本年度は耐性菌による呼吸感染症の中で、院内肺炎で最も問題となるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant staphylococcus aureus:MRSA)についての解析を線維芽細胞ならびにヒト肺由来細胞A549において実施し、これまでに、一般に細胞外で増殖すると考えられているブドウ球菌が細胞内に感染を起こすこと、細胞と共存することで非細菌用培地においても増殖能を獲得すること、細胞内に侵入したMRSAはゲンタマイシン存在下で死滅せず、市中肺炎型MRSA USA300株で生存細菌数が多いことが明らかとなった。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス関連の業務の増加により、その他の研究・教育業務へ影響が及んだため。
1) 緑膿菌をはじめとしたMRSA以外の薬剤耐性菌における細胞への付着性の確認2) インフルエンザウイルスとの共感染での影響
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件)
Cell Reports Methods
巻: 2 ページ: 100314~100314
10.1016/j.crmeth.2022.100314