研究課題/領域番号 |
22K17358
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
青木 明 名城大学, 薬学部, 助教 (80781963)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / ミトコンドリア / UCP1 / フラボノイド |
研究実績の概要 |
これまでに、良姜から得られた抽出物には褐色脂肪細胞 (BA) のミトコンドリア機能を促進する活性成分が含まれることを見出している。今年度は、その活性成分の絞り込みを行った。初代培養ラットBAにおけるUCP1タンパク質発現量を指標として、固相抽出法により得られた複数の画分について、ミトコンドリア機能の活性作用を有する画分を絞り込んだ。さらに、UCP1タンパク質発現増加作用が認められた画分について、LC-MS/MSを用いて含有成分の同定を行った。その結果、いくつかのフラボノイドが同定された。 BAのミトコンドリア機能の活性化に関与する細胞内メカニズムを解明するために、オミクス解析を実施することを計画している。これまでは、主に初代培養ラットBAを使用して検討してきたが、データベースが豊富なヒト細胞株を使用した方がオミクス解析には有利であると考えられる。そこで、ヒトBA株であるA41BAT-SVFを用いたアッセイ系の構築を行った。A41BAT-SVFにBA分化誘導培地で培養して、UCP1タンパク質発現量を測定した。結果、分化誘導14日以降からUCP1タンパク質発現量の顕著な増加が認められた。さらに分化誘導したA41BAT-SVFに良姜抽出物を処理したところ、初代培養ラットBAと同様に、UCP1タンパク質発現量の有意な増加が見られた。このことから、A41BAT-SVFを用いたアッセイ系は、BAのミトコンドリア機能を促進する細胞内メカニズム探索に利用可能であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア機能を評価するためのアッセイ系として、UCP1やPGC-1α遺伝子発現量を迅速に測定可能なレポーターアッセイ系の構築を計画していた。しかし、ヒトBA株であるA41BAT-SVFを用いたアッセイ系の構築に成功したため、A41BAT-SVFを用いたアッセイ系による解析に切り替えた。オミクス解析については、次世代シークエンサーを用いたトランスオミクス解析を実施するためにA41BAT-SVFから得られたサンプルを用いた予備検討を行った。このように、来年度以降に解析するための準備を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
BAのミトコンドリア機能の促進作用を有する画分に含まれたフラボノイドについて、市販されている標準品は購入する。市販されていない化合物は合成することを検討する。得られたフラボノイドについて、A41BAT-SVFを用いたアッセイ系によりBAのミトコンドリア機能に対する影響を評価する。BAのミトコンドリア機能を活性作用を有することが確認されたフラボノイドについては、トランスオミクス解析を実施して、作用機構の解明を試みる。また既に、良姜抽出物処理した初代培養ラットBAのAktシグナルが変化することが分かっているため、ウエスタンブロット法による検討も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
A41BAT-SVFを用いたアッセイ系に切り替えたことで、ゲノム編集によるレポーター細胞の作製を実施しなかったことから次年度使用額が生じた。次年度以降は、標準品の合成やトランスオミクス解析に使用する試薬など、予定よりも使用額が増えることが予想される。
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