研究課題/領域番号 |
22K17394
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
桑原 祐樹 鳥取大学, 医学部, 助教 (20793590)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 治療中断 / 国保データベース / プライマリケア / 糖尿病重症化予防 |
研究実績の概要 |
【研究の背景】糖尿病重症化予防を進めたい地域が多いものの、適切な管理が望ましい患者が、治療を中断する例は多い。地域保健の現場では治療中断予防や再診勧奨の具体的な介入策が望まれ、治療中断の実態把握および治療中断の予防や中断後の再受診に繋がる更なる知見が必要である。本研究では診療報酬データを活用し糖尿病治療中断の実態を解明する。また、地域の協力を得て、治療中断者にインタビューを行い治療中断の予防と再受診に繋がる要因を明らかにする。聞き取り結果をもとに、治療中断者へのアンケート調査を行い、医療と保健の双方向から介入可能な要因を特定することで、地域レベルで実践できる治療中断の予防や再診勧奨の新たな介入法を提案する。 【研究の目的】糖尿病重症化予防事業の一環として、国保データベース(KDB)を用いて糖尿病治療中断の実態を把握し、治療中断を減らし再受診を促すための知見を明らかにする。 【研究実施計画】令和4年度は研究対象者へのインタビュー実施と令和3年度のKDBのデータ分析の実施について倫理審査委員会への申請を予定した。鳥取県KDBデータの提供や加工について国民健康保険連合会と交渉および、糖尿病治療中断者のリクルートについて協力してくれそうな市町村との打ち合わせを進める予定であった。 【研究実施状況】鳥取大学医学部倫理審査委員会から研究実施の承認を得た。その後、事前調整をもとに鳥取県のKDBの匿名加工データ提供研究に必要なデータの提供を受けた。また、インタビュー調査について、米子市、境港市の行政保健師の方々が協力していただけることになった。既に4名がインタビューに応じてくれデータを得た。日本公衆衛生学会学術総会や日本疫学会学術総会に参加することで研究に関する情報収集を行った。また、KDBデータを分析し、2023年10月の国際学会での成果発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り調査にあたっての倫理審査が承認された。国民健康保険連合会との連絡も順調に進み既に最低限必要な匿名加工データを入手し、分析を開始することが出来ている。 インタビュー調査に関しては、研究協力に前向きな2つの市町村との打ち合わせを行い、実現可能な方法や対象者との交渉について検討するのに時間がかかると想定していたが、当初の予定よりも早く調整が進んだ。行政の方々で対象者の抽出やリクルートを進めていただき、既に4名のインタビューデータを入手することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
【令和5年度の計画】 前年に引き続き市町村の協力を得て研究対象者のリクルートおよびインタビューを実施する。当初20名程度へのインタビューを目標としていたが、人数の確保が難しくデータ量としては十分である10名程度の目標に下方修正する。インタビューから得た「治療中断の真相、医師や看護師の関わり方、意思決定や価値判断の特徴、信頼する情報源等」は、録音とフィールドノートで記録し、テープ起こしをする。聴取内容は、質的データ分析ソフト等を用いて個別のカードにまとめ、類似内容を整理し、カテゴリーごとに分類・整理する。分析結果は翌年の調査にむけた調査票を作成する際に活かす。次年度のアンケート調査に向けて、調査会社と連絡を取り、妥当性が高く、十分なサンプルサイズと高い回収率が見込まれる方法を検討する。 【令和6年度の計画】 当初のアンケート調査実施方法としては治療中断者に対しては市町村が郵送する受診勧奨の案内に研究者が作成したアンケートを同封し、自記式のアンケート調査を実施し、対照群として県内の国保診療施設である診療所・病院の協力の下、糖尿病通院中の患者さんに対する留め置きアンケート調査を予定していた。しかし、市町村からの聞き取りではこの調査方法では十分なサンプルサイズが確保できない可能性が高いといった意見が聞かれた。また、県内に限られた対象者となるため得られるデータの偏りが生じることが危惧された。そのため、ある程度全国代表性のある調査パネルへの郵送法での調査や大規模集団を対象としたオンライン調査を用いる方法を検討し、より堅牢な分析が可能な調査方法を実施する。得られた知見は再受診を促す方法にも応用し、治療中断の予防と再受診への介入点を見出す。研究成果を地域の医師・看護師や市町村保健スタッフと意見交換をして、医療現場と地域保健の双方向からの視点を反映した新たな介入戦略を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はノートパソコンなどの備品や、統計ソフト、プリンタートナー、文献管理ソフトなどの消耗品に充てる予定にしていたが、従来使用できるものもあったため執行せずに済んだものもあった。旅費については大学業務や新型コロナウイルス流行のため参加を断念した学術大会があり予定より参加できる学会が少なくなったため減額となった。次年度は国内学会、国際学会での演題発表があるため次年度使用額はそちらにあて、論文にあたっての英文校正や論文投稿料、インタビューデータの文字起こし、質的データ分析ソフト、インタビュー協力者への謝金で使用することを考えている。また、ウェブ調査などアンケート調査をより規模の大きいものに変更した場合の調査費用へ充てたいと考えている。
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