研究実績の概要 |
本研究では日本人集団における脂質プロファイルに影響する遺伝要因と環境要因としての生活習慣の交互作用を明らかにするとともに、脂質プロファイルの変化を介して動脈硬化性疾患発症に至るまでの生体内の代謝物・代謝経路を同定する。令和4年度は、鶴岡メタボロームコホート研究参加者153名を対象にコホート内ケース・コントロール研究を行い、リポ蛋白の詳細分画(CM, VLDL, LDL, HDLの粒子サイズによる20分画)のコレステロール、トリグリセライド(TG)、粒子数と冠動脈疾患発症との関連を検討した。冠動脈疾患発症を従属変数とした条件付きロジスティック回帰モデルでVLDL、LDL、HDL各分画のコレステロール、TG、粒子数の1SDごとの冠動脈疾患発症オッズ比をそれぞれ算出した。共変量は、BMI、空腹時血糖、収縮期血圧、喫煙習慣、飲酒習慣、降圧剤、血糖降下薬、脂質異常症治療薬の服用とした。その結果、小型LDL、大型VLDLのコレステロールは冠動脈疾患発症と正の関連を示し、大型HDLでは負の関連を示した。一方、小型HDLのコレステロールは正の関連を認めた。粒子数もこれらと同様の傾向であった。TGはlarge VLDLで正の関連を示した。結論として、小型LDLと大型VLDLの増加は冠動脈疾患発症リスクの上昇に寄与し、大型HDLは予防的に働く可能性が示唆された。今後、これらのプロファイルに影響する生活習慣および遺伝要因・生活習慣要因との交互作用を検討する。
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