研究課題/領域番号 |
22K17407
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
片桐 諒子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部, 室長 (60813508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 食料不安 / 栄養疫学 / 健康格差 / Food Insecurity / ひとり親 |
研究実績の概要 |
本研究は、新型コロナウイルス感染症による急激な社会経済の変化に伴い、脆弱な層がより影響を受けやすい可能性があることを鑑み、食料不安(Food insecurity)という「食費や他の資源の不足で、個人や世帯が適切な食料を手に入れることができない」状況に注目し、 食料不安に関する社会的、経済的、心理的側面を明らかにし、どのような層が食料不安に脆 弱であるか検討する研究である。この目的に対し、今年度は、コロナ禍の2020年8-10月に一般住民25000人とひとり親約1000人を対象としたインターネット調査において、食費の不足の割合および社会・経済状況の実態を明らかにした論文を国際誌(Katagiri et al. PLoS ONE17(12): e0279266)に発表した。2020年4月以降初めて食費が不足したと回答した社会経済要因を検討すると、年収そのものに加え、ひとり親、非正規雇用、離婚や死別、同居人数が多い、2020年の収入減少が多い人に食費の不足を認めた。さらに、特にひとり親家庭が社会の変化に伴う食料不安に脆弱な可能性を考えて、ひとり親家庭に注目した解析を行った。その結果、ひとり親家庭においては、40歳未満、子どものみと同居、非正規雇用、年収が少ないといった要因が重なると食費不足の割合が増加することを明らかにした。これらの結果を踏まえ、日本人約3万人を対象に実施するインターネット調査において国連食糧農業機関(FAO)が開発した食料不安のスコアであるFood Insecurity Experience scale(FIES)とそれに関連する要因の検討を開始しており、次年度以降解析をまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会経済要因に関する内容を論文として国際誌に公開し、次の解析にもとりかかっていることからおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
食料不安のスコアであるFood Insecurity Experience scale(FIES)とそれに関連する要因の検討を開始しており、次年度以降解析をまとめていく予定である。さらに、妊産婦においてはUSDAのHousehold Food Security Survey Module (HFSSM)による世帯のFood insecurityを評価する質問票を含んでのインターネット調査が既に実施されており、こちらの解析に取り掛かることで、妊産婦や小さな子どものいる世帯に注目した食料不安の研究の実施を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定のデータの研究代表者と同一の統計パッケージを利用する方がよいといった解析の都合上、当初購入を予定していた統計パッケージではなく、別の統計パッケージのライセンスを購入する予定へ変更した。しかし、年度の途中開始となるため、次年度から1年間の使用予定でのラインセンス購入を予定することとして次年度使用額へ計上する予定である。
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