研究課題
急性心筋梗塞は法医解剖でしばしば遭遇する疾患であるが、非常に急速な死亡の過程を経た場合には、心筋の虚血部位の検出が困難なことがある。心筋虚血の超急性期において、ミトコンドリアの分裂と融合及びマイトファジーの恒常性維持機能(ミトコンドリアダイナミクス)の破綻が明らかになっている。また、心筋虚血時にはエネルギー源が脂肪酸から糖優位に移行する(メタボリックスイッチング)ので代謝産物の変化が想定される。本研究では、死後のヒト心臓検体を用い、超急性期の心筋虚血部位で特異的に生じるミトコンドリアの形態異常を把握し、さらに、メタボローム解析による超急性期心筋虚血の診断バイオマーカーを探索して、超急性期心筋虚血の法医診断法の開発を目指す。
3: やや遅れている
申請者が期間中海外留学していたため
急性心筋梗塞事例及びコントロールを対象とし、先行研究で推奨の心臓の10ヶ所程度からサンプルを採取し虚血部位と正常部位で下記①~③の検討を行う。併せて、採取した部位の病理組織学検査・死後冠動脈造影検査・死後MRI検査等の所見と包括的な解析を実施し法医診断法を開発する。① ミトコンドリアの定量と形態学的検討:サンプルを比較し、死後変化に伴う影響を除外した上で、免疫蛍光染色を用いて、ミトコンドリアの定量と形態変化に対する検討を行う。②ミトコンドリアダイナミクスの把握:サンプルから単離したミトコンドリアから、分裂に関与するDrp-1、融合に関与するMfn-1、Mfn-2、マイトファジーに関与するPINK1、Parkin等をウエスタンブロット法で測定し、超急性期の心筋虚血時に心筋内のミトコンドリアに関与するタンパクの量的変化を捉えて、ミトコンドリアダイナミクスの状態を把握する。③ 超急性期心筋虚血のメタボローム解析:サンプルをホモジナイズし、水溶性分画および脂溶性分画を抽出し、質量分析計を用いたメタボローム解析を実施し、超急性期心筋虚血時のメタボリックスイッチングで変化する代謝産物を同定し、超急性期心筋虚血の診断バイオマーカーを探索する。
当該年度の期間中に申請者が一時海外留学中であったため使用額に変更があった。尚、当該年度に予定した計画を次年度に持ち越し、研究遂行する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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