研究実績の概要 |
意識障害を伴う脳卒中を発症した患者の治療の場となることが多い救命救急センターに入院した患者のうち、発病前の意思表示が明らかであった例はわずか8%である(大谷ら,2007)。このことから家族は、患者の意思が不明のまま代理意思決定を行うこととなり、不安やうつ症状を抱えやすいことが指摘されている(W.G.Anderson et al,2008;E.Azoulay et al,2005)。納得した意思決定のためには、他職種からの専門的な情報を整理し患者の意思を尊重した上で、家族が主体的に意思決定できるための支援が重要となると考え、意識障害を伴う急性期脳卒中患者の代理意思決定者となった家族の体験をもとに、家族のニーズを引き出すことができる介入モデルを作成した(坂本ら,2021)。本研究では代理意思決定を行った急性期脳卒中患者の家族が、代理意思決定後に抱える不安やうつ症状を予防する介入モデルの効果を検討することを目的とした。 2022年度は、救命救急センターに勤務する看護師に研究協力を依頼し、介入モデルの実施に向けた準備を行った。また、患者に代わり治療などの意思決定を行う家族への介入モデルについて国外の研究の文献検討を行った。その結果、意思決定支援の対象となる家族は介入モデルの実施により、コミュニケーションの質が向上した、患者の転帰について話し合いを推進できた、意思決定に対する満足度が高く後悔が少ない、患者のICU入室期間が短いという結果が得られていた。一方で、家族の心理的な負担は軽減していない、適切な結果測定のための尺度の選択が難しい、代理意思決定に関連する複雑なプロセスを明らかにする必要がある、などの課題が明らかとなっていた。代理意思決定を行う家族の支援を行うためには、意思決定に必要な情報の提供と話し合いの機会を持つとともに心理的負担の課題に対して、より個別的な配慮を行う必要があると考えられた。
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