研究課題/領域番号 |
22K17537
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研究機関 | 医療創生大学 |
研究代表者 |
岡野 怜己 医療創生大学, 健康医療科学部, 助教 (60897700)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 唾液乳酸濃度 / 嫌気性代謝閾値 / 運動指標 / 有酸素能力 / 介護予防事業 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
介護・福祉領域における運動プログラムは、従事する専門スタッフの不足などにより高齢者の身体能力に応じて運動の負荷量を個別に設定することが難しい状況にある。本研究では特に歩行訓練に焦点を当て、参加高齢者個々の身体機能に適合したオーダーメイドの歩行訓練プロトコールを確立するための手法を提言することを目標としている。病院における歩行訓練では、呼気ガス分析装置を使用して運動中の酸素と二酸化炭素を測定し、嫌気性代謝閾値(AT)と呼ばれる運動閾値を同定し、ATレベル、あるいは心臓リハビリテーション患者などではATに到達する1分前の強度での運動を行うことが安全かつ効果が高いと推奨されているものの、AT測定には大掛かりな設備が必要であり、介護現場での使用は現実的でない。そこで簡便かつ即時的・非侵襲的に測定できる唾液乳酸濃度を用いた運動処方を考案した。歩行訓練プロトコールの策定に先立ち、今年度はまず唾液乳酸濃度が有酸素能力の評価指標になり得るかどうか検証を進めている。健常成人を対象として呼気ガス分析により測定したATが、唾液乳酸濃度の推移から同定もしくは推定できるか調査し、それを元に高齢者への応用を計画している。また唾液乳酸に関する基礎的知見を得るため、健常男性37名を対象に1分半のスクワットジャンプを実施し、運動前・運動直後・以降5分毎にラクテートプロ2(アークレイ社)を用いて唾液乳酸濃度を測定し、被験者の体脂肪率、体水分量、骨格筋量指数との関係性を調査したところ、体脂肪率および体水分量は、唾液乳酸ピーク値に有意に影響(各々p=0.001、p=0.035)しており、体脂肪率と唾液乳酸ピーク値には正、体水分量と唾液乳酸ピーク値には負の関係性があることが明らかとなった。併せて体脂肪、体水分量、骨格筋量指数が複合的に唾液乳酸ピーク値に及ぼす影響は31.2%(p=0.001)であることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響により健常成人以外での研究を進めにくい状況にあったが、健常成人を対象とした予備実験は予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
健常成人を対象としたデータ収集を継続し、有酸素能力の指標としての唾液乳酸の有用性について論文化する。口腔内の環境は加齢により変化するため、実際の高齢者を対象とした同様の検証、歩行訓練プロトコールの策定、ランダム化比較試験によるプロトコールの効果検証へと研究を発展させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はデータ収集が途中であることから消耗品費が減少した。また論文作成や学会発表ができなかったことにより次年度使用額が生じた。次年度に追加実験、論文投稿、学会発表と併せて使用する予定である。
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