閉経後の女性では、男性と比較してレジスタンス運動による筋肥大効果が低いことが報告されており、運動効果を最大限に引き出す方法の確立が必要であると考えた。本研究では、レジスタンス運動と漢方薬との組み合わせが女性サルコペニアを予防・抑制できるかどうかをエストロゲンと関わる経路に着目して明らかにすることを目的とした。本年度はラット卵巣摘出モデルを用いて、クライミング運動トレーニングによる筋肥大へのエストロゲンの影響について検討した。10週齢雌ラットを偽処置群、偽処置運動群、卵巣摘出群、卵巣摘出運動群、卵巣摘出+エストロゲン投与群、卵巣摘出+エストロゲン投与運動群の6群に群分けした。偽処置および卵巣摘出60日後から、トレーニングおよびエストロゲン投与を実施した。8週間後、長母趾屈筋を摘出し、採取した骨格筋からTotal RNAを抽出して、骨格筋タンパク質翻訳容量の指標であるリボソームRNA定量した。結果は、トレーニングによるリボソームRNAの増加の主効果とエストロゲン投与とトレーニングの相互作用を認められた。卵巣摘出+エストロゲン投与群は、リボソームRNAが高値を示し、エストロゲン投与はトレーニングによる筋重量の増加を増強した。そのメカニズムの一つとしてエストロゲンによる骨格筋タンパク質翻訳容量増加が関与している可能性が示唆された。今後は、運動効果を最大限に引き出す漢方薬について、骨格筋タンパク質翻訳容量を増加させる漢方薬を探索する予定である。
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