研究課題
我々は,あらゆる病態におけるサルコペニア診断への応用を目的に「母指球筋」を新たな骨格筋量指標として着目して研究を開始した.当該年度は,研究①健常若年男性を対象としたMRI研究,研究②地域在住中高齢者を対象とした超音波研究を遂行することができた.まず,研究①として,健常若年男性7名を対象に3テスラ高解像度MRIを用いて利き手の母指球筋の撮像を試みた.当初難渋すると予想された母指球筋撮像姿位や撮像条件を含むプロトコルの決定は,当初の予想を覆し極めて円滑にイメージングを達成することができた.得られた母指球筋の撮像画像から母指球筋容量を算出し,全身の骨格筋量として算出した大腿筋容量との相関関係を解析した結果,高い相関関係を示すことを確認した.その後,超音波画像診断装置を使用して,MRIで撮像した母指球筋容量を最も反映する筋厚計測部位を決定し,母指球筋厚(mm)と定義した.超音波画像診断装置で計測した母指球筋厚は,MRIで撮像した母指球筋容量と大腿筋容量と有意に相関することを確認した.次に,研究②として,新潟県佐渡市在住の40歳以上の地域在住中高齢男性63名を対象として,開発した母指球筋厚の妥当性を検討した.外的妥当性を分析するために生体電気インピーダンス法で測定した四肢骨格筋量を用いた.その結果,母指球筋厚と四肢骨格筋量は有意な相関を示し,母指球筋指標が全身の骨格筋量を反映す新たなマーカーとなる可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
当初難渋すると予想されたMRIでの母指球筋撮像のプロトコルの決定は,予備実験を数回実施することで,当初の予想を覆し極めて円滑に進めることができた.画像処理も円滑に進めることができ,母指球筋容量が全身の骨格筋量指標を反映するマーカーとなる可能性を見出すことができた.臨床応用へ繋げるために,地域住民での妥当性検証も進められている.
現段階では,母指球筋が全身の筋量を反映するかについては,男性のみのデータ収集に留まっている.今後は,女性のデータを収集する必要がある.加えて,これまで正確な筋量測定が困難とされてきた下肢骨折の外科的治療後や下肢・体幹に浮腫を有する内部障害患者,全身に各種デバイスが接続された重症患者における妥当性を検証する必要がある.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 19件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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