研究課題/領域番号 |
22K17586
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
兼岡 麻子 東京大学, 医学部附属病院, 言語聴覚士 (40815106)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 頭頸部がん / 嚥下障害 / 嚥下造影検査 / リハビリテーション / アドヒアランス |
研究実績の概要 |
頭頸部癌への化学放射線療法に伴う嚥下障害に対する予防的リハビリテーションは,一定の効果が示されている一方,患者アドヒアランスの低さが課題である.今年度は,患者の行動変容を促す手法(Behavior change techniques, BCT)を取り入れたリハビリテーションハンドブックを作成し,その導入による患者アドヒアランスの向上度を検証した. 対象は,頭頸部癌に対し根治的化学・放射線療法を完遂した患者.そのうち,ハンドブックを用いてリハビリテーションを行った患者を導入群, ハンドブック導入前にリハビリテーションを行った患者を対照群とした.患者にはエクササイズの実施状況を毎回記録するよう求めた。その記録を元に実施率(自主トレーニング実施回数/全自主トレーニングセッション数)を算出し,実施率が80 %以上であった患者を高アドヒアランスとした.対象は30名で、導入群15名,対照群15名となった.高アドヒアランスは導入群で4名(26.7%),対照群では7名(46.7%)で,両群に有意差はなかった.治療終了時の口腔粘膜炎グレードは導入群で有意に高く,口腔粘膜炎は重度であった.放射線性皮膚炎グレード,PASスコア,摂食・嚥下能力のグレード,および摂食状況のレベルは両群に差はなかった.本ハンドブックの導入は,自主トレーニング実施率の向上にはつながらなかった.ただし,導入群は対照群に比して自主トレーニング遂行の阻害要因が対照群よりも重度であったにもかかわらず,対照群と同程度に自主トレーニングを継続できていた.つまり,BCTを用いたハンドブックの使用は,患者の意欲維持および自主トレーニングの継続に寄与する可能性が示唆された.以上の結果を国内学会で報告し、論文にまとめた。現在、査読を終えており、掲載準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は予防的リハビリテーションプログラムの妥当性、実行可能性を検証した。結果はハンドブックのアドヒアランス向上に寄与する可能性を示しており、次年度以降も本研究を継続する基盤が整った。また、すでに予防的リハビリテーションプログラムのアプリ化を行った米国の言語聴覚士とも打合せを行い情報交換をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予防的リハビリテーションプログラムのクラウド化を進める。まず、リハビリテーションプログラムのクラウドサービスを展開する企業と打合せ、プログラムの動画作成作業を進める。次に、当院の個人情報管理部門とも協議の上、倫理審査を受けた後に、本プログラムのクラウド化を導入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度よりクラウド化サービス利用料の支出を予定していたが、初年度にサービス導入に至らなかったため。
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