研究課題/領域番号 |
22K17598
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大林 陽太 藤田医科大学, 医学部, 研究員 (00871120)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 情動 / 表情 / 表情分析 / 不穏 / 意識障害 |
研究実績の概要 |
認知症や脳卒中の発症後に生じやすい無気力や易怒性などの情動機能障害は、患者本人の日常・社会生活に問題を引き起こすのみならず、家族などの介護者や医療者の負担にも繋がる。情動機能障害に対して適切な介入を施すには障害の特徴を適切に捉える必要があるが、既存の評価手法には妥当性・信頼性の点で課題がある。そこで、より客観的かつ正確な評価を可能とする手法の一つとして、表情から情動を推定する表情分析技術に着目した。本研究では、情動機能障害を呈した患者の障害特性を捉える上での表情分析の有用性を検証することを目的とする。今年度の取り組みとして、頭部外傷により意識障害及びそれに関連した情動機能障害を呈した患者1名を対象に、リハビリテーション介入中の表情反応を表情分析技術を用いて解析した。結果として、表情分析により得られた“楽しい“という情動に対応する”笑顔”の表情強度は主観的な評価と相関を認めた。本結果から表情分析技術が介入中の患者の笑顔強度を定量化できることとその妥当性が示された。本結果を踏まえ、新規患者を対象にリハビリテーション介入中の表情反応及び開眼率の測定・解析を行い、既存の意識の重症度評価である広南スコアとの比較を行った。その結果、表情分析に基づく笑顔強度及び開眼率は意識障害が軽度の患者において高まる傾向を示した。また、縦断的な検討では中等症から脱却への改善に伴い開眼率が高まる傾向を示した。これらの結果から、表情分析から得られる指標(開眼率と笑顔強度)は意識の重症度評価である広南スコアと関連することを示し、介入中の覚醒度や認識度といった意識状態の定量的な評価手法として、表情分析が応用できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症に対する感染対策を踏まえた測定環境の準備と対象者のリクルートに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
意識障害を呈した患者の表情反応の定量化に表情分析技術が有用かどうかの検討を進める。また認知機能の低下した患者を対象に、笑顔の反応特性について表情分析を用いて定量化できるか、また健常者と比較して差異はあるかなどの検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で研究活動が制限され、進捗に遅れが生じている。翌年度は論文執筆や学会参加に伴う雑費・旅費の支出を予定しており、当初の予算相当額の使用を想定している。
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