研究課題/領域番号 |
22K17606
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野崎 良寛 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (40754560)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小児 / 先天性心疾患 / サルコペニア / 肥満 / 活動量 / 座位行動 |
研究実績の概要 |
本研究は先天性心疾患患者の遠隔期の総合的な健康増進を実現することを目標に進めている。先天性心疾患における運動機能は多くが心肺機能に注目して行われており、四肢を始めとした筋力についてはこれまであまり注目されていなかった領域である。そのため、ます学童期先天性心疾患患者の筋力や運動、筋肉量の検討をまず進めることにした。評価方法についてリハビリテーション部と協力し開始し評価プロトコールを確定した。 具体的な実施については、新型コロナウィルス感染症の流行があり、対面しての研究を進められなかったため、2022年段階で4例のみだが、握力測定、膝伸展筋力測定、10m歩行、6分間歩行距離、Time up to go test、開眼片足立位、立ち幅跳び、InBodyでの体組成解析、アンケート調査を行った。フォンタン手術後患者3例(うち1名はペースメーカ植込み後)、ファロー四徴症術後1例で、男性3例、女性1例で平均年齢15.4歳ある。まだ健常ボランティアのデータを収集できていないため文部科学省が公表している新体力ストのデータから計測値を各年齢のZ-score{(計測値-平均値)/標準偏差}に換算すると、握力のZ-scoreは-1.435、立ち幅跳びは-2.52と低値であった。いずれもフォンタン術後患者が特に低値となった一方で、片足立位は最大値の120秒実施できていた。体組成計はペースメーカ植込み後の1名を除いて計測でき、体重対する筋肉発達率が体幹97%、下肢94%だったのに対し、上肢では84%と、上肢が低い値を示した。 今後、質問紙法やウェアラブルデバイスによる活動量測定と合わせて検討を進め、十分量の症例数が集まったところでマイオカインをまとめて計測する予定である。また、検討を始めたところで、先天性心疾患患者は中高強度の運動をほとんどしていない可能性がわかり、座位行動の長時間化についても調査が必要と考えられ、座位行動も評価できる体制について研究協力者を通じて構築をすすめている。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度当初より患者群のリクルートをしていき、研究体制の構築および具体的な実施の確認についてプレリミナリーに進めたが、本研究は対面形式で外来リハビリテーションの実施が前提であったが、新型コロナウィルス感染症の流行時期で、病院の外来ベースで対面形式の研究を実施することが許可されず、被験者に来院してもらって研究を進めることができなかった。今後はその新型コロナウィルス感染症への特別対応は不要となり、継続して対象リクルートメントを進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実施について、対象のリクルートメントとして研究情報は開示しており、今年度は継続して患者募集が可能な見込みである。しかし、当院での実施のみでは症例数が不足してしまう可能性があり、県内の先天性心疾患診療機関である茨城県立こども病院や土浦協同病院に共同研究として協力依頼を検討している。 また、先天性心疾患患者が特に運動を控えめにしている様子が研究情報開示の時点から疑われた。近年、中から高強度の運動を十分に行っていくことともに、過度に安静にしてしまう座位時間の長時間化も、健康維持における問題となっている。 WHOの身体活動・座位行動ガイドラインと、身体活動と座位行動が併記されるようになり、座位行動が多い生活スタイルは運動不足になりがちで、肥満やメタボリックシンドローム、高血圧などのリスクを高め、将来の健康に影響を与えることが問題視されるようになった。5~17歳の青少年において「(1)平均で1日60分の身体活動(多くは有酸素運動)を実施する。(2)1週間に3日は高強度の有酸素運動や筋力や骨を強化するトレーニングを取り入れる。」に加えて「(3) 座位時間は最小限にとどめる。特に娯楽目的でデジタル機器のスクリーンを見ている時間を少なくする。」と推奨されるようになっているが、健常者でも遵守率は低い。慢性疾患患者のデータについても検証すべきと考え、座位行動の研究をしている研究者に指導いただき並行してデータを集めるよう準備を始めた。さらに得られるデータと現在収集し始めたサルコペニアのデータを結合させ、日常の活動や座位行動とサルコペニアについて研究を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度開始時点では握力などの体力測定について、リハビリテーション部のスタッフに謝礼を払う形で準備をしていたが、研究参加について広く募ることができず、実施できたのが4例のみであった。このように対象被験者がすくなくなってしまったため、想定した謝金を使うことがなく、今後目標症例数に向かっては次年度使用額に持ち込むことにした。 また、健常者を対象として研究を行う部分もあり、それについて謝礼を準備していたが、健常者に対する実施までができなかったため、予定した謝礼分の額が使用することができなかった。
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