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2022 年度 実施状況報告書

定量的感覚検査と活動量計を活用した化学療法誘発性末梢神経障害の新規疼痛病態の探索

研究課題

研究課題/領域番号 22K17623
研究機関神戸学院大学

研究代表者

大賀 智史  神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 助教 (50882437)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード化学療法誘発性末梢神経障害 / 神経障害性疼痛 / 定量的感覚検査 / 末梢感作 / 中枢感作 / 身体活動量 / 不活動
研究実績の概要

化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy: CIPN)は難治性神経障害性疼痛であり,効果的な理学療法学的介入戦略は確立されていない.CIPNの病態に関しては,動物を対象とした先行研究にて,定量的感覚検査(quantitative sensory testing: QST)を使用し,末梢神経の機能変調が関与することが明らかにされつつあるが,がん患者におけるCIPNの病態解明は患者報告アウトカムを主体とした疼痛実態調査に留まっており,依然として解明には至っていない現状にある.今年度は「神経学的側面からのCIPNの病態解明」を研究目的に計画を進めてきた.当初予定していた研究実施施設での研究遂行が困難であり,研究実施施設を変更したことから,1例のみではあるがQST評価と質問紙評価を終えている.症例は60歳代の女性,肥満体型であり,S状結腸癌術後の化学療法にて手部にCIPNを呈していた.当初は有痛部でのQST評価を予定していたが,疼痛症状にて評価困難であったため,有痛近位部での測定に変更した.結果としては,QSTでは有痛近位部である前腕のPPT低下とTSP亢進,CPM低下を認めており,末梢感作および中枢感作に加えて,疼痛抑制機能不全も認めた.また,質問紙評価では中枢感作関連症状(central sensitization inventory: CSI)や破局的思考(pain catastrophizing scale: PCS),不安・抑うつ(hospital anxiety and depression scale: HADS),自己効力感(pain self-efficacy questionnaire: PSEQ),睡眠障害(Athens insomnia scale: AIS)には問題を認めなかったが,ADL障害(pain disability assessment scale: PDAS)を認めた.そのため,CIPNの神経学的病態には有痛近位部の末梢感作および中枢感作に加えて,疼痛抑制機能変調が関与し,ADL障害を引き起こすのではないかと推察される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

今年度は「神経学的側面からのCIPNの病態解明」という研究目的を基盤に計画を進めてきた.しかし,当初予定していた研究実施施設にて新型コロナウイルス感染症拡大による入院・外来通院患者の制限・減少や研究対象であるCIPNを有する患者が想定よりも少なく,研究実施が困難であった.そのため,非常勤理学療法士として勤務している研究実施施設の外来通院患者を対象とし,研究を継続していく予定で計画を進めている.QST測定部位としては,当初は罹患部である手部もしくは足部を予定していたが,疼痛症状が強く測定困難であることが新たに判明したため,有痛近位部(手部であれば前腕,足部であれば下腿)にてQST評価を実施し,「神経学的側面からのCIPNの病態解明」を引き続き進めていく.そのため,今年度予定していた研究内容の進捗は遅れていると考えている.

今後の研究の推進方策

今年度は1例のみの評価ではあるが,CIPNの神経学的病態には有痛近位部の末梢感作および中枢感作に加えて,疼痛抑制機能変調が関与することが示唆された.一方で,サンプルサイズは少ないため,次年度も「神経学的側面からのCIPNの病態解明」を引き続き進め,当初次年度に予定していた「行動学的側面からのCIPNの病態解明」へと進めていく予定である.

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた研究実施施設での研究遂行が困難であり,交通費として計上していた旅費や消耗品として計上していた物品費を使用しなかったため,その残額が次年度へと繰り越しとなっている.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Decrease in current perception thresholds of A-beta fibers by subthreshold noise stimulation using transcutaneous electrical nerve stimulation2023

    • 著者名/発表者名
      Shimo Kazuhiro、Fukui Hiroto、Ueta Hitomi、Naka Misaki、Miyamoto Satoshi、Nishikawa Eruna、Ohga Satoshi、Matsubara Takako
    • 雑誌名

      NeuroReport

      巻: 34 ページ: 287~289

    • DOI

      10.1097/WNR.0000000000001890

    • 査読あり
  • [学会発表] がんサバイバーに対する運動が疼痛におよぼす影響-メタアナリシスによる検討-2022

    • 著者名/発表者名
      大賀智史,下和弘,松原貴子
    • 学会等名
      第26回日本ペインリハビリテーション学会学術大会
  • [学会発表] 術前から強いがん性疼痛を有する盲腸癌患者に対する周術期リハビリテーションの経験2022

    • 著者名/発表者名
      成瀬宏司,川畑健太,伊藤起子,磯村隆倫,小林豊,大賀智史,松原貴子
    • 学会等名
      第26回日本ペインリハビリテーション学会学術大会
  • [学会発表] がんサバイバーの疼痛に対する各種運動介入の効果-メタアナリシスによる検討-2022

    • 著者名/発表者名
      大賀智史,下和弘,松原貴子
    • 学会等名
      日本ペインクリニック学会第56回学術集会
  • [学会発表] がんサバイバーの疼痛に対する運動の効果-定量的感覚検査をアウトカムとしたメタアナリシスによる検討-2022

    • 著者名/発表者名
      大賀智史,下和弘,松原貴子
    • 学会等名
      第15回日本運動器疼痛学会
  • [学会発表] 当院におけるがん性疼痛の実態調査-後方視研究2022

    • 著者名/発表者名
      成瀬宏司,磯村隆倫,小林豊,大賀智史,松原貴子
    • 学会等名
      第44回日本疼痛学会
  • [学会発表] がんサバイバーの疼痛に対する運動の効果-メタアナリシスを用いた自覚的疼痛強度と定量的感覚検査に関する検討-2022

    • 著者名/発表者名
      大賀智史,下和弘,松原貴子
    • 学会等名
      第44回日本疼痛学会

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公開日: 2023-12-25  

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