研究実績の概要 |
膝前十字靭帯損傷は代表的な膝外傷の一つであり、関節軟骨の変性を特徴とする二次性の変形性膝関節症をしばしば引き起こす。靱帯再建術は前十字靭帯損傷に対する最も一般的な治療法であるが、手術だけでは二次性の変形性膝関節症を完全に予防することはできない。そのため、術後の変形性膝関節症の発症を予防するもしくは遅延させるリハビリテーションプロトコルの確立は重要な課題である。本研究では、前十字靭帯再建後早期の荷重量の違いが関節軟骨の変性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 ラットの膝関節に前十字靭帯切断および再建術を行い、術後は免荷(非荷重)、介入なし(荷重量少)もしくは持続的なモルヒネ投与(荷重量大)のいずれかの条件で術後1もしくは2週まで飼育した。同週齢の無処置の動物を対照として用いた。実験期間終了後、膝関節の組織標本を作製し、脛骨プラトーの関節軟骨の変性を組織学的に評価した。 前十字靭帯再建後、介入なしで飼育すると術後2週までに軽度な軟骨の変性が生じた。術後に免荷を行うと、介入なしと比較して軟骨の変性が悪化した。術後にモルヒネを投与することで荷重量を増加させても、介入なしと同程度の軟骨の変性が生じた。 これらの結果は、前十字靭帯再建後早期の荷重は、たとえ部分的であったとしても軟骨の変性を軽減するために重要であることを示唆する。この研究成果は国際誌で発表した(Kaneguchi et al., Connect Tissue Res. 2023)。
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