研究課題/領域番号 |
22K17626
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研究機関 | 福岡国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
谷口 隆憲 福岡国際医療福祉大学, 医療学部, 助教 (00851198)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 運動恐怖 / 破局的思考 / 運動学的評価 / 共収縮 / 歩行 / 階段昇降 |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行や階段昇降動作は,関節変形や異常筋収縮などの運動機能障害だけでなく,運動恐怖や破局的思考などの恐怖回避思考も影響することが報告されている.しかし,恐怖回避思考が動作時の関節運動や筋活動に及ぼす影響は不明であるため,運動学的評価や実用的なリハビリテーションプログラムは確立されていないのが現状である.本研究の目的は,恐怖回避思考を有する膝OA患者の歩行および階段昇降動作の運動学的特性を解明し,新たなリハビリテーションプログラムの基盤を構築することである.前年度は,膝OA患者の歩行・階段昇降中の共収縮を解析し,恐怖回避思考との関連を調査した.対象は膝OA患者とし,三次元動作解析装置と表面筋電計を使用して歩行・階段昇段・降段中の下肢関節運動と筋活動を計測した.筋電図データより,膝内側筋(内側広筋と半腱様筋)と膝外側筋(外側広筋と大腿二頭筋)の共収縮をCo-contraction ratiosにて算出し,恐怖回避思考は,運動恐怖をTampa Scale for Kinesiophobia,破局的思考をPain Catastrophizing Scaleにて評価した.さらに,共収縮に影響する因子として,疼痛強度をVisual Analog Scale,Varus thrustを下腿の側方加速度,体重増加をBody Mass Index,下肢アライメントをFemoro-tibial angleにて評価した.各動作時の共収縮と評価項目との関係を検討した結果,膝OA患者の運動恐怖は階段降段時の共収縮と関連する可能性が示唆された.また,恐怖回避思考と共収縮の関連性は,歩行と階段昇降で異なる可能性があり,各動作で介入方法を考慮する必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は,膝OA患者の恐怖回避思考が歩行・階段昇降中の運動学的評価に及ぼす影響について調査した.本研究の結果は,国内学会にて発表し,現在,論文投稿中である.恐怖回避思考と運動学的特性の関係をより詳細に解明する必要があるため,データ計測および解析は継続している.次年度以降は,リハビリテーションプログラムを検討する予定であり,先行研究の調査,実験環境の整備,解析方法の検証,研究プロトコルの見直しを進めている.当初の予定通り進めることができたことから,おおむね順調に進行していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
恐怖回避思考を有する膝OA患者のリハビリテーションプログラムを構築するためには,恐怖回避思考と動作時の運動学的評価との関係をより多角的に解明する必要があるため,心理的評価と運動学的解析は継続する.これらの研究結果をもとに,恐怖回避思考を有する膝OA患者の実用的なリハビリテーションプログラムを構築し,介入効果を心理的・運動学的観点から検証する予定である.また,現在の研究体制を維持しつつ,共同研究者の協力の元,新たな実験環境を整備していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
支出は概ね計画通りであったが,COVID-19の影響を受けて,参加予定の学会がweb開催となったため次年度使用額が生じた.また,早い段階で論文は投稿したものの,査読に時間を要しており,論文掲載費が次年度使用額となった.残額は次年度の学会参加費や論文投稿費に充当する予定である.
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