研究課題/領域番号 |
22K17632
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大塚 章太郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (80849901)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | RIPC / 脳梗塞 / 神経保護効果 / 内在性保護因子 / リハビリテーション医学 |
研究実績の概要 |
本年度では、遠隔虚血プレコンディショニングの介入方法の適切な設定を行った。遠隔虚血コンディショニングは、虚血前、虚血中、虚血後のタイミングで介入を行うことができ、本年度は、脳虚血中における遠隔虚血コンディショニングの虚血時間、再灌流時間に着目した。虚血時間と再灌流時間の調整によって、脳梗塞に対する神経保護効果にどのような影響を及ぼすかを検討した。多くの先行研究で脳虚血期間中に虚血10分-再灌流10分×3セットの介入を採用しており、この方法を基本として、虚血10分-再灌流5分、虚血5分-再灌流10分、虚血10分-再灌流10分の3つの介入方法で実験を行った。結果として、虚血時間を5分から10分に変更しても、脳梗塞体積の縮小効果は変化しなかったが、再灌流時間を10分から5分に短縮すると脳梗塞体積の縮小効果が減少した。そのメカニズムとして、神経栄養因子であるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)の発現と神経細胞のアポトーシス抑制に焦点を当て、免疫組織学的染色とWestern blottingでタンパクの発現を評価した。BDNFの発現量は、虚血10分-再灌流10分の群と虚血5分-再灌流10分の群で有意に増加していた。アポトーシス最終決定因子であるcaspase 3においても、虚血10分-再灌流10分の群と虚血5分-再灌流10分の群で活性化が低下していた。遠隔虚血コンディショニングにおいては、虚血時間よりも再灌流の時間の調整が神経保護効果に影響を与える可能性を明らかにした。今回の結果は、論文としてまとめScientific Reportsに投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、遠隔虚血コンディショニングの介入方法の検討を目的に研究を行った。 計画の段階では、脳梗塞作成前に遠隔虚血プレコンディショニングを行い、介入方法の調整する予定であった。しかし、これまで研究を進めてきた虚血中の遠隔虚血コンディショニングの介入方法を確立することで、プレにも応用できると判断して、優先的に研究を行った。最も効果的な遠隔虚血コンディショニングの介入方法を設定するために、最適な虚血時間と再灌流時間を検討した。結果として、虚血よりも再灌流時間の延長が神経保護効果に影響を与えることが明らかになり、虚血10分-再灌流10分×3セットが最適である可能性を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策としては、虚血中の遠隔虚血コンディショニングの介入方法を確立することができたので、脳梗塞の発症前に介入を行っていく予定である。これまでの研究で、3週間の期間で週3日の予防運動を行えば、脳梗塞体積の縮小効果を獲得できるということを明らかにしている。そこで、RIPCを運動に置き換えて、週3回の介入によって脳梗塞体積の縮小効果を獲得できるかどうかを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、脳梗塞発症前に介入を行う予定であったが、虚血中の遠隔虚血コンディショニングの介入方法の検討を行うことで、幅広く応用できると考えた。そのため、実験期間の短縮が起こり、動物の飼育費や備品の購入費用が削減され、使用額に差額が生まれた。
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