非アルコール性脂肪肝( NAFLD)は生活習慣の欧米化にともない本邦でも患者数が急増している。またNAFLDは肝細胞癌の危険因子であり、本邦でもNAFLDが原因の肝細胞癌が年々増加している。NAFLDの治療は、運動療法が基本治療となっている。我々はNAFLDの改善に有効な運動療法の研究を行ってきた。先行研究として健常者を対象に単回の運動で、糖代謝やがん予防に関わるmiR-630の発現量が運動後1.5倍有意に増加することを確認した。 本年度は、NAFLD患者への運動効果を検証した。我々は、肝線維化指標が上昇したNAFLDの症例において、1日1回10分の低強度レジスタンス運動プログラムを実施した。運動プログラムは、ウォームアップ、4 種類のレジスタンストレーニング、ストレッチを実施した。この運動プログラムは主に体幹と下肢を対象とした運動とした。運動時間は約10 分であった。 症例は、低強度運動プログラムを開始してから60 週後に9.1 %の体重減少を達成した。またHOMA-IR 値、血清トリグリセリド値は低下した。また肝線維化に関わるFIB-4 indexの血清レベルは、基準値まで低下した。 運動は様々なケモカイン/サイトカインの発現に影響を与える。運動は、インターフェロン-ガンマ誘導タンパク質-10(IP-10)などの炎症関連バイオマーカーを減少させる。さらに、運動は肥満マウスの血小板由来成長因子-BB(PDGF-BB)を改善し、骨格筋細胞からの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)分泌を促進する。これらのケモカインやサイトカインは、肝線維化制御に関与している。本症例でも48 種類のケモカインとシトカインの変化をマルチプレックス解析で調べた。その結果、血清G-CSF 量は著しく増加し、血清IP-10 量とPDGF-BB 量は著しく減少した。今年度は、英語論文として報告した。
|