研究課題/領域番号 |
22K17692
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
白井 隆長 筑波大学, 体育系, 研究員 (20940787)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Exerkines / 運動様式 / 骨格筋 / 生理活性物質 |
研究実績の概要 |
運動による身体の適応は、実施(選択)する運動様式によって異なること、また、同じ運動であってもその適応には個人差があることが知られている。研究代表者は、運動様式による身体適応の違いを左右する要因の一つに、「エクサカイン(Exerkine)」と呼ばれる、運動によって体内で分泌・循環する生理活性物質が影響しているという仮説を立てて実験を行った。 研究代表者は、運動様式に応じたエクサカインの分泌条件とその機能を検証することを目的とし、実験動物モデルを用いて様式特異的なエクサカインの分泌動態について検討した。本研究では、7週齢のC57BL6/J雄マウスを使用した。群分けとして疑手術を行ったSham operation (Sham)群、腱切除により筋肥大を誘導したoverload(OL)群、OLに加え、Swimmingによる持久性運動を行ったOL+Swim群の3群を設けた(各群n=8)。実験期間は4週間とした。Swimの運動条件として60分間の自由泳を週5回行った。 解析対象組織として、骨格筋(足底筋)、白色脂肪組織(鼠蹊部:iWAT、精巣上体:eWAT)、褐色脂肪組織(BAT)、肝臓、血液をサンプリングし、各解析に使用した。 検証の結果、足底筋はOLによって筋肥大が誘導され、SwimはOLによる筋肥大を減弱することを確認した。興味深いことに、eWATの重量およびサイズはOL群とOL+Swim群で低値を示したのに対し、iWATの重量およびサイズはOL+Swim群でのみ低値を示したことから、Swimは対全身の脂肪組織を変化させる一方で、OLは一部の脂肪組織にしか作用しないことが明らかとなり、Swim特異的な身体適応が誘導されることが示唆された。 次年度以降は、採取したサンプルの追加解析及び、血中因子の検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた動物実験の計画を遂行し、運動様式特異的な応答を評価できた。当初予定していなかった組織の解析も行った結果、大幅な進展に繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、より応用的な検証をするために、ヒトを対象とした検討を行っていく。運動の条件として、レジスタンス運動、持久性運動、短時間高強度インターバル運動(HIIT)を設定し、各運動の運動実施前後に採血を行う。採取した血液より血漿および血清を抽出する。採取した血液サンプルは研究代表者が得意とする in vitro実験系に使用し、培地中の血清(または血漿)濃度が10%となるように添加する。血液サンプルは筋管を形成した骨格筋培養細胞C2C12やヒト筋芽細胞に1時間または24時間添加後、細胞外フラックスアナライザーにて酸素消費速度(OCR)、細胞外酸性化速度(ECAR)の指標から計測、評価し、運動様式の違いによる応答を検討していく。
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