研究課題/領域番号 |
22K17712
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高御堂 良太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (70908813)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 対人技能 / 相互作用 / 打撃動作 / 投球動作 / 動的時間伸縮法 / 相互相関分析 |
研究実績の概要 |
本年度は当初の予定の通り、実際の競技場面の投手ー打者間の対戦動画を対象に、相互作用(互いの動作の因果関係)を定量化するための分析手法の確立に取り組んだ. 具体的には、投手、打者の体重移動(頭部の位置の遷移)に着目をして解析を行うにあたって、当初予定していた従来の因果性解析手法を直接適用することが困難であったため、新たに動的時間伸縮法(Dynamic Time Warping)と相互相関分析(Cross-Correlation Analysis)を用いた分析手法を開発し、分析を行なった. 結果として、1. 競技場面において、投手と打者は一定の時間差を保って動いている、リーダーフォロワーのような関係性にあり、熟練の打者は意図的に投手に対して動くタイミング(間合い)をずらしながら自らの打撃動作を実行していること、2. また、投手の動きは打者の動作によって影響を受けることは小さいものの、逆に打者の動作は投手の動作によって大きく影響を受けるという、非対称の相互作用の関係にあること等を明らかにすることができた. これらの結果は、熟練の投手、打者は単に「速いボールを投げる」、「正確な打撃動作を行う」といった観点からのみでなく、「他者に対してどう動くか」といった点からも、熟練技能を有していることを示している.このような「二者間の関係性」に関する知見は、従来の動作解析手法等では明らかにすることは困難であり、本研究によって、初めて得られた知見であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたように、従来の因果性解析手法を直接適用することは困難であったため、新たに独自で分析手法を開発するという形式をとったものの、「実際の競技場面における対人相互作用を定量化する」という目的自体はある程度達成できており、結果をまとめた論文の国際誌への投稿も完了している.そのため、概ね順調に推移していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果をもとに、より詳細な分析・解析を行うため、モーションキャプチャやフォースプレート等を用いて対戦時の両者の動作をより詳細に計測し、最終的な研究目的であった、1. 対戦相手のどの身体部位の情報を用いて自らの動作を実行しており、2. それが熟練者-未熟練者間でどう異なるか、といった点を明らかにすることを予定している.また、これらと並行して、論文投稿や学会発表等も行い、研究結果を指導現場に還元するという観点からも、積極的な研究活動を行っていくことを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
過去に申請者が取得したデータをもとに分析手法を構築することが可能であったため、当初予定していた実験機材や謝金、その他の費用が発生しなかったため.
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