研究実績の概要 |
昨年度, N-Back課題を用いた実験モデルを確立した。本モデルはVR運動が実行機能に与える影響を検証する上でも活用され, その成果は投稿準備中である。一方で, fMRIで課題中の脳内活動を評価する際, 課題特異的な脳部位の活性評価は困難であった。これは低酸素下運動実験でも同様の問題となることが予想される。そこで, ネットワーク解析を考慮したブロック課題のストループ課題を作成し, その効果検証を行うこととした。その結果, 個人差があるものの, 運動による実行機能低下をブロック課題のストループ課題によって検証できることを確認した。本評価法を用い, 低酸素下運動による実行機能低下の脳内機構解明と生理的メカニズム解明に着手した。 生理的メカニズムとして, 当初の目的であるキヌレニン代謝と新たに末梢血乳酸の関与を検証した。キヌレニン代謝は採血量が多く, 実験対象者に心理的負担を与え, 実行機能に影響を与えている可能性が示唆された。一方で, 末梢血乳酸は微量の採血による測定ができ, 乳酸性作業閾値の低い人において, 高強度運動のような高乳酸値になると実行機能が低下する可能性が示唆された。 採血量や心理的負担の問題点が出たため, キヌレニンの関与解明には至っていないが, 実行機能低下の個人差の因子を解明でき, 実験対象者のグループ分けなど解析方法を考慮できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低酸素環境での運動前後での採血は対象者への負担が大きく, 実験参加希望者が限定的になるだけでなく, 心理的な負担を増加させ, 運動以外の影響が心理や実行機能データに影響する可能性がでた。採血の負担を最小限にするため, 実験モデルの改良が必要となり, 計画実施が遅れたが, 実験モデルの改良が完了したので, 計画完了を目指し推進する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では, キヌレニンとその代謝産物であるキノリン酸, キヌレン酸を血中から測定する計画としていたが, 採血量が多いと実験対象者に負担を与える可能性が出てきた。キノリン酸, キヌレン酸は血液脳関門を通過せず, 末梢血からの影響が考えにくいため, 血液脳関門を通過するキヌレニンだけに着目し, 採血量を限定して測定することで, 実行機能低下の関与を検証することも視野に入れて実験モデルを改良する。 また, 運動による実行機能低下には個人差があることがわかっていたが, 本研究で初めて, 乳酸性作業閾値の関与が示唆された。キヌレニン測定前に各対象者の乳酸性作業閾値を評価し, 個人差を考慮して検証することで, 因果関係解明につながる可能性がある。
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