研究課題
本研究の目的は、身体の巧みなパフォーマンスに重要となる巧緻性を必要とする「筋出力調節能力(グレーディング能力)」について、特に「力を抜く」調節メカニズムに関する生理学的・心理学的状態による影響を解明することである。研究方法は、バイオメカニクス的手法および生理学的手法によって統合的な知見が得られることから、2022年度は「力を抜く」調節において、張力、筋電図、超音波エラストグラフィを用いて基礎的な筋動態について明らかにするために、ターゲットレベルおよび変化量が同じ場合での等尺性力発揮動作におけるグレーディング課題を用いて検討した。具体的な実験設定としては、スタートレベルは異なるが、ターゲットレベルおよび変化量が同じ場合のグレーディング課題として、増加時は20%MVFの増加(スタートレベル20%MVF→ターゲットレベル40%MVF)、減少時は20%MVFの減少(スタートレベル60%MVF→ターゲットレベル40% MVF)とした。増加時と減少時における張力、筋電図および超音波エラストグラフィの特性について、目標となるターゲットレベル呈示の有無による比較を行った。筋電図から積分値(integrated EMG:iEMG)、超音波エラストグラフィからは剛性率(shear modulus:SM)を算出し、筋動態を定量化した。張力とiEMG、張力とSMの関係性は、増減時で異なる傾向がみられた。ただし、個人差が大きかったため、その要因や、増減時で関係性が異なる場合の要因など、さらなる実験による検証が必要であると考える。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、筋出力調節能力について、特に「力を抜く」調節メカニズムに関する生理学的・心理学的状態による影響を解明することである。1年目である2022年度は、張力、筋電図、超音波エラストグラフィを指標に用いて、ターゲットレベルおよび変化量が同じ場合での等尺性力発揮動作におけるグレーディング課題を用いて、増加および減少時の張力および筋動態の特性を検討した。よって、当該年度は概ね計画通りに進めることができたといえる。
計画通り実験を進めるとともに、実験結果を踏まえて、新たな検討点や課題についても着手する予定である。
当初は、筋力測定器の改造について初年度の設備備品費として計上していたが、再検討した結果、翌年度に計上することとしたために次年度使用額が生じた。この残額については翌年度分と合わせて設備備品費および実験・解析に必要な物品に使用する予定である。
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