本研究の目的は、1)マーケティング理論を用いて幼児の体力向上につながる保育者への有効な普及戦略のアプローチは何かを明らかにする。そして、2)そのアプローチを教育保育政策に応用し、全市を対象としてその効果を検証することである。 初年度の分析の結果から、保育者の幼児期運動指針の認知を高める必要性が明らかとなった。2023年度は、モデル施設における保育者らと対話を進めながら、具体的な情報の伝え方の検討および予備的に検証を行う計画であった。 研究実施計画における2023年度の実績は以下の通りである。研究①では、2015年以降のデータ整理を行うとともに、体力に関する新たなデータを収集した。保育者アンケートデータをさらに分析し、幼児期運動指針の3つの観点に全て取り組む保育者は、保育時間に幼児が自発的に身体を動かす時間を確保していた(P=0.02)。また、異年齢の運動遊びを取り入れている傾向が見られた(P=0.07)。しかし、運動の専門家ではない保育者が、日常の保育活動においてより積極的に運動遊びを導入する難しさがある。そこで、モデル施設の運動遊びの視察と保育者のインタビューを実施した。既に行われている運動遊びの事例を健康運動指導士とともにナッジ理論のフレームワーク(EAST)に基づいて分析・整理した後、運動遊びを促進する「環境づくり」の観点について保育者らと意見交換を行った。その後、モデル施設での取り組みが進んだ結果、保育者にとって環境づくりの心理的な障害が低くなり、また幼児が主体的に運動遊びに取り組み、さらに発展的な活動につながったとの感想を得た。モデル施設おいては、幼児の身体活動と体力に関する追跡評価を実施したので、詳細に分析結果を検討する。研究②では、2024年度に全市調査を行う。さらに、同年度に市内の保育者向け研修会を企画しており、これまでの知見をもとに全市普及を強化する。
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