この研究では、以前の観察研究で発見された血糖変動の安定化と関連する患者の背景因子に関する調査を深堀し、2型糖尿病における膵β細胞機能と血糖変動の関係を、初期の膵β細胞機能障害を示すマーカーである血清プロインスリン/Cペプチドを用いて検証した。その結果、血清プロインスリン/Cペプチドの高値は、24時間持続血糖モニターで抽出された高血糖時間と肥満度と、それぞれ関連性が示された。また、膵β細胞機能障害と高血糖との関連性も指摘された。
さらに、2型糖尿病患者において内因性インスリン分泌が保持されている場合、血糖変動の変動係数は腹部脂肪面積と関連していないことが観察されたが、内因性インスリン分泌が低下すると、血糖変動の大きさは腹部内臓脂肪面積の減少と関連した。また、内臓脂肪面積の増加は血糖変動の不安定化や低血糖時間の延長と関連した。さらに、内因性インスリン分泌能が低下した2型糖尿病において、内臓脂肪面積と骨格筋面積の低値を合併すると、血糖変動が不安定になる傾向がみられた。この関連性は年齢や糖尿病治療に関わらず成り立つ可能性があった。
この研究から、内因性インスリン分泌能は不安定な血糖変動の予測に役立つことが明らかとなり、患者ごとの体組成に基づいた最適な治療法の選択にも貢献する可能性がある。本研究は、糖尿病治療の個別化の実現に寄与できると考えられる。
|