研究課題/領域番号 |
22K17781
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
山口 桃生 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30804819)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD) / 非アルコール性脂肪肝炎(NASH) / 肝星細胞(HSC) / アデノシン動態 / 肝実質細胞 / 脂肪酸 / NASH進行のスイッチ |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の一部は、線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行する。肝星細胞(HSC)は肝傷害時にコラーゲンを分泌する活性型に形質転換することから、NASH進行にはHSCの活性化が必須である。本研究では、肝臓内アデノシン動態の変化が炎症時のHSC活性化促進、すなわちNASH進行へのスイッチとなる、という仮説を証明し、NASHの予防法や治療法への応用につながる基盤的知見を得ることを目的とする。 本年度は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)病態下における肝臓内のアデノシン動態に関して検討を行った。NASHモデルマウスの肝臓において、アデノシン産生酵素の発現が増加し、アデノシン輸送担体やアデノシン分解酵素の発現が減少していた。また、これらの変化はNASHの前段階である単純性脂肪肝病態においても同様に観察された。さらに、これらアデノシン動態関連分子の発現変化は、肝実質細胞での発現変化に起因することが明らかとなった。そこで、マウス肝実質細胞株AML-12細胞を用いて脂肪酸負荷がアデノシン動態関連分子に与える影響を検討した。AML-12細胞にパルミチン酸とオレイン酸を負荷することにより、アデノシン産生酵素の発現が増加し、培養液上清中のアデノシン濃度が有意に上昇した。さらに、マウス初代培養細胞HSCとパルミチン酸とオレイン酸を負荷したAML12細胞を非接触条件下で共培養したところ、脂肪酸非負荷のAML12細胞との共培養と比較してHSCの活性化が促進した。以上の結果より、肝実質細胞への脂肪酸負荷は、アデノシン動態関連分子の発現変化を解して肝臓内アデノシン濃度を上昇させることで、HSCの活性化を促進し、NASH進行のスイッチとなる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り進展し、NASH発症と肝臓内アデノシン動態との関係の解明に加え、肝臓内アデノシン動態が変化する原因の解明に関しても検討を進められているため。
|
今後の研究の推進方策 |
NASH発症と肝臓内アデノシン動態との関係をin vivoで明らかにするとともに、その分子基盤を確立するためにアデノシン受容体阻害がHSC活性化に対するプロスタグランジンE2の作用を反転させる機序を解明する。
|