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2022 年度 実施状況報告書

ストレスレジリエンスとしての新規体熱産生機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K17788
研究機関近畿大学

研究代表者

大塚 愛理  近畿大学, 理工学部, 助教 (80845917)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード心理社会的ストレス / 体熱産生 / 褐色脂肪細胞 / ストレス誘発性体熱産生
研究実績の概要

本研究は、褐色脂肪組織を介さないストレス誘発性体熱産生の新規経路の解明と、新規体熱産生経路がストレス曝露後の情動行動に与える影響を明らかにすることを目的とする。
本年度は、BAT交感神経切除マウス及びBAT切除マウスにおける体熱産生部位の特定を行った。腹腔内に体温及び行動量測定装置を埋め込み、社会敗北性ストレス(SDS)曝露後の体温変化をモニタリングした結果、BAT交感神経切除マウス及びBAT切除マウスにおいても、Sham手術マウスと同様に腹腔内体温の上昇がみられた。また、サーモカメラを用いた体表面の観察結果から、BAT交感神経切除マウス及びBAT切除マウスでは、SDS1日目の肩甲骨間の体表面温度がSham群と比較して低下した。しかしSDS3日目において、BAT切除マウスではSham手術マウスと同程度まで肩甲骨間の体温が上昇していた。そこで、これらの群において肩胛骨間の脂肪組織を採取し、体熱産生関連遺伝子であるUCP1発現を調べたところ、BAT切除マウスではBAT交感神経切除マウスよりも高い発現量を示した。また、BAT交感神経切除マウス及びBAT切除マウスにおいては、腹側において脚部の温度上昇が観察され、SDS曝露後の行動量も増加していた。そこで脚部骨格筋における体熱産生関連遺伝子であるUCP3の発現を調べたところ、大腿四頭筋においてはBAT交感神経切除マウス及びBAT切除マウスの両群で、それ以外の筋肉ではBAT交感神経切除マウスのみでUCP3発現が増加していた。以上のことから、BAT交感神経切除マウスでは脚部の体熱産生がストレス誘発性の体熱産生を保証している可能性が示された。その一方で、BAT切除群に関しては脚部体熱産生の他、肩胛骨間脂肪組織の褐色化が起こっている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度・来年度に計画した実験のうち、BAT交感神経切除マウス及びBAT切除マウスの体熱産生部位の特定が完了し、特定した部位における体熱産生に関与する遺伝子の発現増加も確認した。これらのマウスにおいて血液や脳のサンプリングも終わっており、脳内モノアミンや血中アドレナリンなどを順次解析中である。次年度行う予定であるアドレナリンレセプター阻害剤などの薬剤投与の実験については、試薬などの準備は整っており、現在予備検討を行っている。

今後の研究の推進方策

本年度の結果より、BAT切除マウスにおいてSDS曝露に伴い肩胛骨間の体熱産生が回復するという現象がみられた。したがって、SDSにより誘発された因子がBATの再生もしくは肩胛骨間白色脂肪組織の褐色化に関与している可能性がある。また、BAT切除マウスでは、鼠径部における白色脂肪組織のUCP1発現も増加傾向がみられており、液性もしくは神経性の刺激が白色脂肪組織の褐色化を促し、代謝亢進を引き起こしていることが示唆される。そこで次年度は、白色脂肪組織の褐色化を促す因子を特定するために、アドレナリンや甲状腺ホルモンなどの液性因子の関与や、これらの分泌に関与する脳部位の特定、また、代謝関連遺伝子の遺伝子発現解析などを行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度の研究計画はおおむね計画通りに進んでおり、未使用額の発生は物品の値段変更などによって生じた。
本年度分の残額は次年度の試薬調達に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Effect of the dietary intake of fish oil on psycho-social behavioral disorder caused by social-defeat stress2022

    • 著者名/発表者名
      Airi Otsuka, Masaki Tamaya, Asuka Toda
    • 雑誌名

      Physiology & Behavior

      巻: 254 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.physbeh.2022.113913.

    • 査読あり
  • [学会発表] Relationship of stress-induced hyperthermia without brown adipose tissue and stress-like behavior2023

    • 著者名/発表者名
      Airi OTSUKA
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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