研究課題/領域番号 |
22K17809
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
松永 安由 高崎健康福祉大学, 農学部, 助手 (40802591)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 母乳哺育 / 食物アレルギー / IgA / 母子栄養 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまでに、母親の摂取たんぱく質特異的に、母乳を介して、乳仔に経口免疫寛容が誘導されアレルギー症状が抑制されることを動物実験で明らかにしてきた。また、母乳中に食事由来たんぱく質がIgAとの免疫複合体として存在し、これがアレルギー抑制の実効分子である可能性を示してきた。一方で、母乳を介した乳仔のアレルギー抑制に、母親の栄養状態が及ぼす影響はほとんど解明されていない。そこで本研究では、日本人授乳婦で不足が懸念される栄養素の不足または補充が、母乳による乳仔のアレルギー抑制に及ぼす影響の解明を目的として、マウス食物アレルギーモデルを用いた検証を行う。 2022年度においては、母乳哺育を介した乳仔食物アレルギーモデル実験(経口免疫寛容の誘導)を本学動物実験施設にて導入することを目指した。動物実験は、実験施設の環境やマウスを購入するベンダー、餌や水、免疫抗原等の試薬のロット等によって観察される表現型に微妙に差異が出る。申請者はこれまでの所属先においてもアレルギーモデルを用いた動物実験に取り組んできたが、本学の動物実験施設でも同様の条件で実験が可能であるか検討した。 その結果、これまでと同一条件で実験を行った場合、乳仔のアレルギー症状である下痢症状がこれまでよりも強く発現する傾向があることが明らかになった。本研究で用いるオボアルブミン(OVA)特異的アレルギー性下痢モデルは、予めOVAを2回免疫した後、OVAの経口投与を繰り返すことで徐々に下痢症状が悪化していくが、本年度実施した実験条件では、初回のOVA経口投与前に下痢症状を呈する個体が観察された。下痢症状の強弱に影響する要因は不明であるものの、アレルギー症状が強すぎると、本研究で検討する栄養素摂取の違いによるアレルギー症状の抑制(もしくは亢進)作用が観察されにくくなる可能性があり、さらなる条件検討が必要であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に行った動物実験の結果、従来実施してきた実験条件ではマウスのアレルギー症状が強く出現しすぎることが分かり、さらなる条件検討の必要性が明らかになった。動物実験の条件検討については2022年度中に完了する予定であったが、次年度も引き続き実施し、現動物飼育施設における最適条件の決定を目指すこととする。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、より詳細な動物実験の条件検討を行う。具体的には、仔マウスの免疫に用いるOVAの投与量を減らした場合のアレルギー性下痢症状を観察し、適切な条件を見出す。さらに、母マウスに与える餌に含まれる卵白たんぱく質の種類を変更し、仔マウスのアレルギー症状に影響を及ぼすか確認する。 実験条件の決定後、母親の亜鉛ならびに葉酸の欠乏もしくは補充による仔マウスのアレルギー症状への影響の検討に移行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初購入予定であった小動物用麻酔装置について、共用備品の利用が可能であることが判明し、本申請課題での購入を見送ったため次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、マウスのアレルギー症状を評価する指標の一つである直腸温を測定するための体温計(微小精密温度計、製品番号:BAT-7001H)の購入に充てたいと考えている。
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