研究実績の概要 |
循環器病死亡は日本の死因の24.8%を占め、高齢化の影響で今後も増加すると言われている。循環器病の治療は多大な医療費を要するため、循環器病死亡の将来動向を可能な限り正確に推定することは、医療政策立案に重要である。高精度な死亡予測には、循環器病死亡数の長期動向に影響する年齢・時代・世代の効果を考慮可能なBayesian age-period-cohort (BPAC)モデルが有用と、先行研究で報告されている。また、本邦の循環器病死亡数は47都道府県間で差があることが報告されており、この地域差を考慮してBAPCモデルを作成する必要がある。しかしながら、そのような試みは実施されていなかった。 日本在住の30歳以上の男女を対象に、政府統計と国立社会保障・人口問題研究所の公開データとBAPCモデルを活用し、冠動脈疾患と脳卒中の将来死亡数を予測するモデルを開発した。従来モデルと比較して、本研究で開発したモデルは予測精度が高いことが示された。2020年から2040年の全国レベルの予測死亡数は冠動脈疾患において男性で39,600(95%信用区間: 32,200 to 47,900)から36,200 (21,500 to 58,900) と微減、女性で27,400 (22,000 to 34,000)から 23,600 (12,700 to 43,800)と減少、脳卒中において男性で 50,400 (95%信用区間:41,900-60,200)から40,800 (25,200-67,800)と減少 、女性で52,200(43,100-62,800) から47,400 (26,800-87,200)と微減であった。 本結果は、都道府県毎の最適な循環器病死亡数減少のマイルストーン設計に役立つと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
冠動脈疾患と脳卒中の死亡数に対する将来動向予測モデルを、47都道府県毎、男女毎、年代毎、年齢層毎に開発した。その精度は十分に高いことを確認できた。これらの結果をもとに、国際誌(Kiyoshige, Ogata, et al. The Lancet Regional Health -Western Pacific. 2022)を発表できた。認知機能低下とフレイルに対する予測モデルを構築するための観測データも収集が完了した。認知機能とフレイルのアセスメントをうけた者約1800名のデータとなっている。
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