研究課題/領域番号 |
22K17828
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高田 忠幸 香川大学, 医学部, 寄附講座教員 (10714272)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | microRNA / brainstem / neurogeneration / SAMP8 mouse / aging |
研究実績の概要 |
加齢促進モデルマウス(SAMP8)はこれまで脳幹,海馬,大脳皮質等へ段階的に病理学的に加齢変性が拡がっていくことが知られている.正常加齢マウス(SAMR1)と比較してSAMP8では20週齢で脳幹に変性がみられ始め,より早期から認知機能の低下がみられることが知られている.本研究では,これらの背景から海馬,嗅球,大脳皮質,脳梁,脳幹等の解剖学的に異なる部位別にエクソソーム中のmiRNAを測定し,SAMP8の脳幹で特異的に発現が亢進または低下するmiRNAを同定する.そのmiRNAの中から,既知の病理変性の拡がり方に準じて亢進または低下していくmiRNAを同定し,miRNAの観点から加齢変性のmodulatorが何かを同定していくことを目的とする. 1. 対象:雄のマウスを用い,それぞれ,①SAMR1 group, ②SAMP8 groupとし,各7匹ずつ割り当てる. 2. 方法 全てのマウスは,20週齢まで自由に食物と水分を摂取できる環境に置く.Y字型迷路試験を施行し,動物が測定時間内に各アームに進入した回数および連続して異なる3 本のアームに進入した組み合わせの数を測定し,交替行動率(%)を算出し,短期記憶の指標とする.これら評価後に脳を採取し,各群1匹は組織評価用に後固定し,各群 6匹の海馬,嗅球,大脳皮質,脳梁,脳幹をmiRNA測定用に保存する.組織学的評価は前額断で6um厚のパラフィン包埋切片を作成し,HE染色で神経細胞の変性を確認し,既報の報告と相違ないか確認をする. 3. 本研究の研究対象であるエクソソームを回収する.①,②群のmiRNA発現プロファイルをクラスター解析も含めた統計学的解析を行う.有意な変動を認めたmiRNAについては,miRNA発現量をリアルタイムPCRで定量する.有意差のついたmiRNAについて老化と関連のある分子を同定する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
20週齢のSAMR1とSAMP8のマウス間ではY字迷路におけるalternation behavior rateには有意差がみられず,短期記憶はSAMP8では維持されていたが,locomotor activity countsに関しては有意にSAMP8群で上昇しており,過活動の状態であった.したがって,ごく軽度の認知機能の差を確認することができた. 脳幹,海馬,大脳皮質での病理学的変化は既報の変性所見と相違なく,miRNAの解析をすすめることに問題はなかった.まずはアレイによってmiRNAの解析を行い,SAMP8の脳幹で特異的に発現が亢進していたもの(miR-491-5pとmiR-764-5p),または低下していたもの(miR-30e-3p and miR-323-3p)をベンズを用いて同定することができた.これらのmiRNAが脳幹,海馬,大脳皮質の順にmiRNAの発現が段階的に変化しているか確認をすすめている.
|
今後の研究の推進方策 |
これらについてmiRNA発現量をリアルタイムPCRで定量評価を行っていく予定である.また,有意差のついたmiRNAについて老化と関連しそうな機能がは何かを解析していく.予算が許せば,予定通りその他の解剖学的部位についても同様の解析を追加していく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で出張費を使用することはなかったが,次年度はコロナ禍も落ち着き,学会参加が増えると思われる.microRNA解析用のチップやアレイ,リアルタイムPCRを行う際の消耗品なども購入予定である.
|