研究課題/領域番号 |
22K17834
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
平尾 卓也 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (80827759)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | がん代謝 / 分子標的治療薬 / β酸化 / 脂質制限 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、分子標的薬による糖代謝の抑制時に白血病細胞が脂肪酸β酸化に生存を依存することを証明し、分子標的薬治療時における脂質制限補助療法の有用性を立証することにある。今年度は、in vitroにおけるBCR-ABL陽性白血病細胞に対するチロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)曝露時のエネルギー代謝状態(解糖系、ミトコンドリア、TCA回路及びβ酸化)及びそれら阻害剤の併用による抗腫瘍効果の増強を評価した。 エネルギー代謝状態においては、TKIsによる解糖系の低下及びミトコンドリア機能の亢進、TCA回路の亢進が確認された。脂質代謝に関しては、TKIs曝露時における白血病細胞内の脂肪滴の減少が観察された。また、脂質代謝や脂肪酸合成に関わるAcetyl-CoA Carboxylase(ACC)やPCG-1αなど各種酵素の変動やも確認された。各種エネルギー代謝機構の阻害実験では、①ミトコンドリア複合体Ⅱ及び②Ⅴ阻害剤、③α-ketoglutarate dehydrogenase(α-KDH)阻害剤、④isocitrate dehydrogenase(IDH)阻害剤、⑤carnitine palmitoyltransferase I/Ⅱ(CPT1/2)阻害剤、⑥部分的β酸化阻害剤など、TKIsにより亢進するエネルギー代謝機構の阻害剤との併用によって白血病細胞に対する抗腫瘍効果が増強することが明らかとなった。さらに、分子標的薬の効果を減弱する栄養素としての脂肪酸の重要性を証明するために脂質添加実験を試みたが、細胞培養液中の脂肪酸の有無でTKIsの効果は変わらなかった。 現在、TKIs曝露時における白血病細胞内への脂肪酸取り込み量及びβ酸化活性の評価に着手している。また、血液がんモデルマウスを用いて各種阻害剤とTKIsの併用実験、及び脂肪制限食によるTKIsの薬効評価を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、COVID-19感染症によって医療機関への応援やワクチン調製などの業務が負荷となり、目標とした成果まで届かなかった。また、COVID-19による共用試験(OSCE)実施計画の対応(8月-10月)も本研究エフォートの低下に少なからず影響が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、今年度行えなかった検討と並行して動物実験にも着手している。脂質制限実験に関してはin vitroで検証するよりもまず、動物実験での知見を集めることで研究の推進を図る。また、COVID-19感染症による県外移動制限も解消されることが期待されるので、研究協力機関と本課題を進めていく次第である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来であればβ酸化活性及び脂肪酸取り込み試験に使用す試薬を購入して実験を行う予定であったが、研究の遂行が遅延したために、これら試薬の購入を見送った。早急にこれらの試薬を購入し実験を行う予定である。また、動物実験を並行して行うにあたり、次年度は予想より高額な出費となる可能性が高い(2023年4月より実験動物の価格改定が行われた)。故に、計画的な出費を心掛ける次第である。
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