研究実績の概要 |
ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は、ヘムを鉄、ビリルビン、一酸化炭素(CO)に分解する律速段階酵素である。胎盤では、COは血管拡張作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用を有し、血流維持や炎症及びアポトーシスの抑制に働いている。ビリルビンは抗酸化作用を有し、胎盤での酸化―抗酸化のバランスを担っている。酸化ストレスの過剰は生活習慣病の発症や伸展に関与し、ヘムの代謝産物のもつ抗炎症作用や抗酸化作用は生活習慣病の予防にも大きな役割を果たしている。 子宮動脈の虚血による低出生体重-非肥満型高血糖発症モデルマウスを用いて、酸化ストレス及び抗酸化ストレス代謝物について検討した。妊娠マウスを妊娠16.5日に両側子宮動脈の血流を15分間遮断した虚血群(I)とコントロール群(C)に分類した。出生後にI群とC群の雌の新生仔マウスを4週齢で離乳し8週齢まで標準食(オリエンタル酵母MF)で飼育した 。8週齢で摘出した児の肝臓を用いてメタボローム解析を実施した(各群:n=3)。I群は、C群と比べ、酸化ストレス代謝物(3-Indoylsulfuric acid, Cysteine, S-Adenosymethionine)の有意な上昇(いづれもp<0.05)、抗酸化代謝産物のGlutathioneの上昇(p<0.05)を認めた。 以上より、虚血による低出生体重児は、成人期において抗酸化に比して酸化が優位である可能性が示唆された。
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