研究課題/領域番号 |
22K17867
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白井 僚 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70910834)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 無線給電 / 磁界結合 / 水中無線給電 |
研究実績の概要 |
本研究は,多数の機器への同時給電に最適な給電方式を提案し,またその安全性を電磁理論に基づき解明することを主たる目的とする.そこで本年度は特に「送電コイルと受電コイル間の磁界結合が極小時に無線給電が可能な手法について,検討を進めた.以下詳述する. 通常の無線給電回路では,1つの送電回路が一つの受電回路に対して,磁界を通じて電力伝送する,1対1の無線給電を行うのが一般的である.一方で本研究では,一つの無線送電回路が不特定多数の受電回路に対して無線給電を行う,1対多の無線給電回路を検討する.したがって,送電回路は必ずしも受電回路の近傍には設置されない.また給電可能範囲を広げるため,送電回路の磁界生成用コイルは,受電回路のコイルよりも大きくなる.こうした条件下においては,送電コイルと受電コイル間の磁界結合が非常に微弱になる.磁界結合の度合いは,結合係数というパラメータによってあらわされる.従来研究における1対1の無線給電では,結合係数が概ね0.1以上となるケースが多かった.一方1対多の無線給電を行う場合,結合係数が0.01よりも小さい場合において無線給電が可能である必要があることが,研究により明らかになった.また,このような場合において,受電コイルを流れる電流を適切にスイッチングすることで,低結合係数であっても,効率よくエネルギーを受電する手法を提案した.本研究で提案した手法を実機評価したところ,結合係数が0.008以下の場合であっても,小規模集積回路や,センシング回路などを動作させるのに十分な電力が得られることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初,初年度に1対多および多対多の無線給電の理論検討に取り組み,その実現可能性を評価する計画であった.一方,研究開始後に,1対多の無線給電においては,送電コイルと受電コイル間の磁界結合が,従来の無線給電システムに比べ著しく小さいため,そのままの構造では必要十分な電力伝送ができないという課題を発見した.そこで研究計画を変更し,特に,結合係数が極小時に無線給電を行うことを可能にする回路構造の提案に取り組んだ.当該回路は1対多のシステムのみならず,多対多のシステムにも適用できることが判明しており,全体としては研究計画に遅れは見られないものと考える.こうした理由から,研究課題全体の進捗状況としては(2)おおむね順調に進展している,と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
従来では実現が困難とされていた,極小結合係数下であっても無線給電が可能であることが,本年度の研究で理論と実機の両面から明らかになった.一方で現在の実験は,スイッチング回路が常に適切に動作することを想定しているなど,理想的な条件下で行われているものである.そのため,今後,実際に実用可能な無線給電方式の開発に取り組む.具体的に,センサノード内のエネルギーを使い果たしている際は,現在の構造のままであるとセンサ内のスイッチング回路を作動させることができないが,こうした場合に無線給電可能な手法の提案に取り組む また,本方式は送電回路が交番磁界を生成し続けるため,無線給電環境内の金属異物などが発熱するなど安全性の課題がある.そこで次年度以降,金属異物を適切に検知し,それに伴って送電用磁界を制御する手法の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
主な要因として,国際学会へ投稿していた論文が査読で不採録となり,発表に際して必要となることを見越して研究開始直後から確保していた旅費を使用しなかったことが挙げられる.一方,当該論文については,現在さらに研究が進んだものを英文論文誌に投稿すべく準備を進めている.当該論文誌は掲載料が不要であるため,次年度使用分は,当初とは別の国際学会への参加費および旅費として使用する予定である.
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